グランジができるまで 第2回 ~黎明期のグランジとSub Popの成立~

◎最初のグランジバンドであるGreen Riverの誕生


前回はBlack Flagが提示した「遅いハードコア」がシアトルの
パンクシーンに強烈な衝撃を与えたことを紹介しました。

そうした影響を受けたシアトルのインディミュージシャンの中で
最も欠かすことのできない存在がGreen Riverというバンドです。

Black Flagの1983年のライブに来て衝撃を受けたマーク・アーム、
スティーブ・ターナー、ジェフ・アメン、アレックス・ヴィンセントの
4人によってまずGreen Riverが結成され、そこに先に紹介した
10 Minute Warningの影響を受けたストーン・ゴッサードが加入し、
初期のGreen Riverのラインナップが完成します。

Green Riverの最大の特徴はBlack Flagが提示した
「ダークで遅いハードコア」を継承していたことに加えて、
パンクシーンのバンドでありながらストーン・ゴッサードとジェフ・アメンが
ハードロック/ヘヴィメタルからの影響も強かったこともあり、
それらの要素が自然とサウンドに取り込まれていたことにあります。

サウンドの全体像を見るとBlack Flagの「遅いハードコア」直系の
「ダークでラフで引きずるようなパンクロック」であるのですが、
そのギターリフの構成などを見るとLed Zeppelinや70年代のAerosmithなど、
70年代ハードロックの持っていた要素を見て取ることができるのです。

この遅いハードコア+70年代ハードロックの融合、
これこそがグランジという新しいスタイルを決定づけるものでした。

そしてGreen Riverは1985年11月に"Come on Down"という初のEPをリリースします。
これがグランジとしての最初のアルバムとなりました。

その代表曲である"Come on Down"を聴いていただきましょう。

Green River - Come on Down (1985) [Grunge]


全体として見ればいかにも「Black Flagチルドレン」という感じですが、
ギターのリフだけに耳をやるとハードロックの香りも強く感じます。

これを機にシアトルのパンクシーンでは「遅いハードコア」+ハードロックの
形式を受け継いだバンドが多く生まれてくることになります。

◎Sub Popの成立とSoundgarden


このようにして1984~1985年にかけて生まれたグランジでしたが、
実はここから1年ぐらいはそうしたレコードがリリースされなくなります。

というのも、これまでいくつか聴いてもらったことからわかるように、
このグランジは完全にアンダーグラウンドなインディシーンでの動きだったため、
ヒットする要素はまだなく、メジャーレーベルが食指を動かすことはありませんでした。

となると、そのシーンを支えるインディレーベルが求められることになりますが、
当時のシアトルにはまだそうしたレーベルが十分に発達していなかったのです。

そのため、先に紹介した10 Minute Warningなどは
シアトルで活動していた頃にはレコードを残すことすらできませんでした。

Green Riverが誕生した後、それと共通するグランジ的なサウンドを鳴らすバンドは
SoundgardenやSkin Yardなどを代表として生まれてきていましたが、
レコードをリリースする手立てが生まれていなかったのですね。

1985年にはまずC/Zレコードというレーベルが生まれ、
そこから初のグランジコンピである"Deep Six"がリリースされます。

先に触れたSoundgardenやSkin Yardもそこに曲を提供しています。

しかしC/Zレコードはその後もそこまで活動が大きくなることはありませんでした。

そんな中、シアトルのラジオに関わっていたジョナサン・ポーンマンという人物が
Soundgardenに感銘を受け、「彼らのレコードをリリースしたい」と申し出ます。

それに対してSoundgardenのメンバーが「じゃあレコード会社をやろうとしてる
ブルース・パヴィットという奴がいるので、そいつと一緒にやればいいよ」と提案します。

ブルース・パヴィットはその時点でSub Popというインディロック系ファンジンを発行しており、
その流れからそれをレコード会社として発展させたいと考えていたものの、
資金がなかったことからその動きはなかなか上手く行っていませんでした。

そこにSoundgardenから提案を受けたジョナサン・ポーンマンが資金提供を申し出て、
ブルースと共同でSub Popというレーベルを運営していくことになり、
無事にSoundgardenの初のEP"Screaming Life"が1987年にリリースされます。

また、Sub Popもここから軌道に乗り、シアトルのパンクシーン(グランジシーン)で活動する
バンドの多くのレコードをリリースするようになり、グランジシーンは一気に活性化します。

まずはそのSoundgardenのEP"Screaming Life"からの曲を聴いてもらいましょう。

Soundgarden - Hunted Down (1987) [Grunge]


Green Riverと同じくBlack Flag的な「遅くてダークで引きずるようなパンク」の
流れを汲んでいますが、よりBlack SabbathやLed Zeppelinを思わせるような
70年代的なヘヴィなハードロックの要素が強く打ち出されているのが特徴です。

◎シアトルシーンへのNirvanaの参加とMelvins


Black Flagの「遅いハードコア」の洗礼を受けたシアトル周辺のバンドとして
欠かせない存在としてMelvinsというバンドが挙げられます。

MelvinsはもともとBlack Flagが「遅いハードコア」を提示する前から
活動していましたが、その頃は速いパンク、いわゆるハードコアパンクのバンドでした。

それがBlack Flagの"My War"アルバムにおける「遅いハードコア」に衝撃を受け、
「遅くてヘヴィで引きずるようなサウンド」へと一気に傾倒していくことになります。

その後Melvinsは他のグランジバンドとは異なり、さらにアングラ色を強め、
グランジとはまた異なるスラッジメタルというジャンルの創始者的存在となりますが、
「Black Flagの洗礼を受けて黎明期のグランジを支えたバンド」であることも間違いありません。

ここではそのMelvinsがグランジコンピ"Deep Six"に提供した曲を聴いてもらいましょう。

Melvins - Grinding Process (1986) [Grunge / Sludge Metal]


Green RiverやSoundgardenと比べてもさらにアンダーグラウンド臭が強く、
ズルズルと引きずるような重さを持っていることが特徴となっています。

さて、このMelvinsが大きな影響を与えた人物にカート・コバーンがいます。
カート・コバーンといえば、もちろんあのNirvanaの中心人物ですね。

カート・コバーンはもともとワシントン州アバディーンで活動しており、
Melvinsのメンバーでもあるデイヴ・クローヴァーとFecal Matterというバンドをしていました。

そしてMelvinsのメンバーからBlack Flagの"My War"を紹介され、
カート・コバーンもまたBlack Flagから強烈な影響を受けることになります。

そこからカート・コバーンもシアトルに移ってNirvanaとして活動をすることになります。

Nirvanaは一般的にグランジを最も代表するバンドとして語られますが、
グランジ形成の歴史から見るなら、実は二番手集団的な時期にシーンに登場しています。

まずGreen River, Soundgarden, Melvins, Skin Yardなどが黎明期のグランジを支え、
そこにSub Popレコードが成立してインディーシーンとして活気を見せてきたところに、
NirvanaやTadといった第二世代的なグランジバンドが加わってきたという感じです。

そのNirvanaももちろん初期はいかにもBlack Flagチルドレン的なサウンドを鳴らしています。
例によってBlack Flag+70年代ハードロック(Aerosmith, Led Zeppelinなど)という感じです。

Nirvana - Negative Creep (1989) [Grunge]


この曲を含むアルバム"Bleach"のリリースが1989年ということで、
これまでに紹介したバンドに比べると台頭してきた時期がやや遅めですね。

このようにしてシアトルのパンクシーンは一気にBlack Flagの洗礼を受けた
「遅いハードコア+70年代ハードロック」的なバンドであふれかえることになります。

こうして黎明期のグランジが完成しますが、ここからシーンは変化を見せていきます。

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テーマ : 洋楽ロック | ジャンル : 音楽

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