サイケデリックロックができるまで 第4回

これまでインド音楽を導入することによるサイケデリックロックの形成と
バロック音楽や室内音楽を経由したファンタジー系サイケを見てきましたが、
それとは全く異なった形で生まれたサイケデリックロックもあります。

今回はそのガレージロック系サイケデリックロックの形成を見ていきます。

そしてこの動きがサイケデリックロックをさらに幅広い形に広げ、
巨大なムーブメントとなる土台となっていくことになります。

ガレージロックは60年代前半に勃興したラフで攻撃的なロックですが、
1965年あたりになるとここにサイケデリックな感覚が乗っかるようになり、
ガレージロックとサイケデリックロックの境界がだんだん曖昧になってきます。

その先鞭をつけたのがガレージサイケバンドThe Seedsによる
1965年11月のシングル"Pushin' Too Hard"となります。

The Seeds - Pushin' Too Hard (1965)
[Psychedelic Rock / Garage Rock]


この時点ではおそらくThe Seedsは
「サイケデリックな酩酊感の表現を目的としたロック」
としてこの曲を作ったわけではなかったと思われます。

また、歌詞を見てもドラッグを意識したような表現は特にありません。

しかしこのサウンドはガレージ系サイケデリックのど真ん中を突いており、
後のガレージサイケバンドのサウンドは完全にこの曲の影響下にあります。

従来のガレージロックに比べてヘロヘロとしてルーズなサウンド、
頭がどこかに飛んでるのではないかと思うようなトリップ感に満ちたヴォーカル、
地下室でドラッグをやってるかのような薄暗さに満ちた空気感、
これはもうガレージ系サイケデリックとしか呼びようのないものです。

そして何より注目してほしいのがこの曲がリリースされた時期です。

1965年11月ですが、この時点ではまだThe Byrdsの"Eight Miles High"もリリースされていません。
The Beatlesがフォークにシタールを導入した"Norwegian Wood (This Bird Has Flown)"よりも前です。

すなわち、この曲はサイケデリックロックの歴史を語るうえで、
極めて早い段階で作り出されているのですね。

言い換えるなら、
「LSDの酩酊感の表現を直接的に意識していたわけではないが、
サイケデリックロックとしか呼べない最初の曲」
がこの"Pushin' Too Hard"であると言ってもいいでしょう。

ただそれゆえ、最初のリリースの段階ではこの曲はほぼ売れませんでした。
サイケデリックロックとしてあまりに早すぎたのでしょうね。

そのかわりこの曲が1966年7月に再度リリースされた際にはけっこうヒットしました。
それだけこの曲が時代を先取りしていたというふうに言うことができるでしょう。

さて、このThe Seedsが切り拓いた道を多くのガレージバンドが進むこととなります。

そして1966年10月から11月にかけて、
サイケデリックロックの大きな転換点となる出来事が起きます。

ガレージ系サイケバンドが続けて、タイトルに"Psychedelic"と冠した
アルバムを次々とリリースしていくという動きが起きるのです。

まず1966年10月17日にはガレージ系サイケバンドThe 13th Floor Elevatorsが
"The Psychedelic Sounds of the 13th Floor Elevators"というアルバムをリリースします。

このアルバムの代表曲である"You're Gonna Miss Me"を紹介しましょう。

The 13th Floor Elevators - You're Gonna Miss Me (1966)
[Psychedelic Rock / Garage Rock]


サウンドは完全にThe Seedsの"Pushin' Too Hard"の流れにあることがわかります。

このバンドの曲では大抵全編に渡ってヒュコヒュコという謎の音が鳴っていますが、
これはエレクトリック・ジャグというこのバンドだけが使っている変な楽器です。

アルバム名に堂々と"Psychedelic"と冠しているということは、
「これはLSDによる酩酊感の表現した音楽である」
という表明に他なりません。

こうして自分達から"Psychedelic"と名乗る音楽が出てきたことによって、
サイケデリックロックは本当に確立されたと言ってもいいかもしれません。

そして1966年11月にはBlues Magoosというガレージ系サイケバンドも
"Psychedelic Lollipop"というアルバムをリリースします。

ここではその代表曲である"(We Ain't Got) Nothin' Yet"を紹介します。

Blues Magoos - (We Ain't Got) Nothin' Yet (1966)
[Psychedelic Rock / Garage Rock]


ここで注目してほしいのが、この曲全体で強調されているオルガンです。

オルガンをロックに使うのはこれ以前からも普通に行われていましたが、
ここではサイケデリックな酩酊感の表現のためにオルガンが使われています。

このあたりを一つのきっかけとして、オルガンはサイケを代表する楽器の一つとなります。

また1966年10月にThe Deepというバンドも"Psychedelic Moods"という
"Psychedelic"を冠したアルバムをリリースしていますが、
このバンドは活動期間も短かったことから、ここでは割愛しておきます。

そしてこうしたガレージサイケの流れはさらに進行していくこととなります。
ここで非常に重要なバンドとしてThe Electric Prunesを紹介します。

もうバンド名がすでにいかにもサイケデリックな雰囲気を漂わせてますが。

The Electric Prunes - I Had Too Much to Dream (Last Night) (1966)
[Psychedelic Rock]


ここで紹介した他の3曲とはやや雰囲気が異なることが伝わるかと思います。

先に紹介した3曲はどれもけっこうラフな雰囲気であったのに対して、
こちらの曲はもうちょっと整合性を感じさせる仕上がりとなっています。

すなわち、「ガレージ系サイケの音楽性を受け継ぎながら、
ガレージロック的な荒々しさが薄まったサイケデリックロック」
がこのあたりから徐々に確立されていくことになるのです。

この方向性は後にさらに発展して、サイケの主要スタイルの一つとなっていきます。

とまぁ、今回はガレージ系サイケデリックが確立されていく流れを見ていきました。

◎ここまでのサイケデリックロック形成の年表


1965.6.4 The Yardbirds - Heart Full of Soul (Single)
1965.7.30 The Kinks - See My Friends (Single)
1965.11 The Seeds - Pushin' Too Hard (Single) (Album 1966.4, Re-release 1966.7)
1965.12.3 The Beatles - Norwegian Wood (This Bird Has Flown) (Album "Rubber Soul")
1966.2.25 The Yardbirds - Shape of Things (Single)
1966.3.14 The Byrds - Eight Miles High (Single)
1966.4.15 The Rolling Stones - Lady Jane (Album "Aftermath UK")
1966.5.16 The Beach Boys - Album "Pet Sounds"
1966.5.30 The Beatles - Rain (Single "Paperback Writer")
1966.8.5 The Beatles - Love You To, Tomorrow Never Knows (Album "Revolver")
1966.10.10 The Beach Boys - Good Vibrations (Single)
1966.10.17 The 13th Floor Elevators - Album "The Psychedelic Sounds of the 13th Floor Elevators"
1966.10 The Deep - Album "Psychedelic Moods"
1966.11 Blues Magoos - Album "Psychedelic Lollipop"
1966.11 The Electric Prunes - I Had Too Much to Dream (Last Night) (Single)


この年表を見ると、いかにThe Seedsが先駆的であったかがわかりますね。

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テーマ : 洋楽ロック | ジャンル : 音楽

コメント

 
かーとさま
今度はガレージ・ロック系サイケデリックですね。ガレージ・ロックは主にアメリカで始まった動きですね。広いガレージで演奏するイメージはやっぱりアメリカならではですね。最初はラフで攻撃なロックだそうですが、これが60年代前半に始まったいたというのもずいぶん早くて驚きですね。

最初のThe Seedsの曲、これはすごいユニークですね。日本のなんとか音頭という感じの曲ですごい面白いです。ギターが三味線ぽくて、サイケとはずいぶん遠いイメージですがなんだこりゃ?と楽しめる曲です。

続いてのThe 13th Floor Elevatorsの曲はこれはまた昔ブームであったゴーゴーダンスのような曲ですね。腰をくねらせながらみんなでダンスするのにぴったりのような感じです。実際ゴーゴーとは関係があったんでしょうか?それにしてもこのヒュコヒュコという音がまた面白いですね。サンバで使われるクイータという楽器でも似たような音が確かします。
https://www.youtube.com/watch?v=mmlK94QvwiA
でもこっちは人が早口で言ってるようでとても面白いです。アルバムにどうどうとサイケデリックとうたってるだけあってリズム感に酩酊感が絡んでぶっとんだ曲ですね!

Blues Magoosの曲、Deep PurpleのBlack Nightが似てますね~出だしのフレーズは同じですね。Deep Purpleもオルガン使ってますし、あとのBlack Nightがずいぶんパクッテるのは否めませんね。

最後のThe Electric Prunesの曲は確かに前3曲と違う印象ですね。メロディは親しみやすい実にポップな感じです。しかし変わった楽器を使ってるのか、面白い音がいろいろ聞こえてきますね。

今回紹介のガレージ・ロック系のサイケ、変わった楽器とか使っていてそれが不思議と面白く新鮮ですね。こんな試みも1965-66年ころあったんですね。勉強になりました。次回を楽しみにしております。
とら次郎のとうちゃんさん、こんばんは!

ガレージロックは60年代前半からアメリカでは盛んでしたね!
The SonicsやThe Wailersなどがとりわけ有名でしたね!

アメリカはガレージで演奏したり砂漠で演奏したり面白いですよね!
土地が広いアメリカならではの発想とも言えるかもしれませんね!

The SeedsやThe 13th Floor Elavatorsのヘロヘロとした
ガレージサイケって、日本の音楽とは何の関係もないはずなのに、
日本風のたこ踊りみたいな変な踊りをしたくなりますよね!笑

ときどきこのあたりを聴きながら一人で変な踊りをすることもあります!笑

この少し脱力したような感覚が独特の魅力があるのですよね!(●・ω・)

クイータの映像を拝見いたしましたが、エレクトリックジャグと構造が似てますね!

エレクトリックジャグもバケツ型の楽器で、
それの中(?)を引いたり押したりして音を出すようです!

なので、高速電気クイータみたいな感じとも言えるかもです!

>Blues Magoosの曲、Deep PurpleのBlack Nightが似てますね~出だしのフレーズは同じですね。
>Deep Purpleもオルガン使ってますし、あとのBlack Nightがずいぶんパクッテるのは否めませんね。

おおっと、さすがとら次郎のとうちゃんさん、そこに気付きましたね!(`・ω・´)

このBlues Magoosの曲から「何となく聴いたような」感が漂うのは、
Deep Purpleの"Black Night"がこの曲に似せて作られてるせいなのですよね!

このBlues Magoosの曲はかなりヒットしましたがし、
Deep Purpleのメンバーもこの曲を知らなかったはずはないので、
この曲のオルガンのフレーズをギターリフにしてみようというのが
"Black Night"の元ネタだったと見て間違いないでしょうね!

The Electric Prunesの曲はけっこう整合性がある感じですよね!

その中でサイケデリックな幻覚をいかにして演出するか、
そのあたりを不思議な音で再現している感じですよね!

次回はまたさらに変わったサイケのスタイルが登場します!

それでは、今回も丁寧なコメントをありがとうございました!(゚x/)

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