サイケデリックロックができるまで 第2回

「サイケデリックロックができるまで」シリーズの第2回記事です。

前回の第1回記事でロックのインド音楽への接近を紹介しましたが、
今回はそれを踏まえてサイケデリックそのものな音楽が登場します。

1966年3月14日、あらゆる面でサイケデリックな曲が発表されます。
The Byrdsによる"Eight Miles High"というシングルです。

このブログを以前から読んでくださっている人は、
「The Byrds・・・どこかで聞いたような」と思っているかもですが、
以前の「フォークロックができるまで」で登場したフォークロックの開祖的バンドです。

そのThe Byrdsがサイケデリックロックでも重要な役割を果たすのです。

The Byrds - Eight Miles High (1966) [Psychedelic Rock]


シタールそのものではないものの、インド風に演奏されたイントロのギター、
そしてダラーンと溶けるような酩酊感に満ちたヴォーカルなどが非常に印象的です。

また、この曲はもうタイトルからしてサイケデリック色に満ちています。

まず「8マイル」のような大げさな表現はサイケデリックロックの大きな特徴で、
さらに"High"という単語をチョイスしているところもそれに拍車をかけています。

この"high"という言葉、サイケデリック時代には「(LSDで)ハイになっている」ことを
指すためのある種の隠語として多用されているのです。

そのためレコード会社などはこの単語に非常に敏感になっていました。
現在ほど過激な表現が許容されていた時代ではなかったですからね。

少し注意しないといけないのは、そうした時代背景であったがゆえに
当時「これはドラッグソングではないのか?」と問われた際には
わざと知らないフリをして否定していることが多かったことです。

それゆえ当時ドラッグソングであることを否定していたからといって、
本当にそうではないと解釈するのはむしろ避けたほうがいいのです。

わざとそう言い訳できるように歌詞などを書いていたケースも多かったですので。
そのためサイケ時代の曲の歌詞はダブルミーニング的なものがよくあります。

「表面的に読むと普通の歌、でも本当はLSDの歌」みたいな感じです。

この曲も当時ラジオからバンされた際に「ドラッグの歌ではない」と言ってましたが、
80年代にはこの曲についてメンバーが「もちろんドラッグの曲だよ。書いたときもラリってたし」
とはっきりと言ってしまっています。

この曲以前にもサイケデリック的なサウンドそのものは存在していましたが、
「LSDの酩酊感を意図したうえで、そうしたサウンドを作った」というのは、
この曲が初めてに近く、そうした意味で歴史的意義が非常に大きいです。

この1ヶ月前にThe Yardbirdsがリリースした"Shape of Things"も
この"Eight Miles High"と並ぶ最初の「意図的なサイケデリックソング」
として語られることがありますが、そちらはサウンドだけを聴いても
"Eight Miles High"ほど明確なサイケデリック的なトリップ感はないので、
ここではこちらの"Eight Miles High"のほうを重要視することにしました。

ただ、The Yardbirdsの"Shape of Things"は長期化するベトナム戦争に対する
反戦的なテーマが含まれており、これがサイケデリックロックと連動した
ヒッピームーブメント、フラワームーブメントの趣旨と重なるところが大きく、
その点において非常に重要な役割を果たしたことは特筆できるところです。

そしてこのThe Byrdsの"Eight Miles High"に負けじと、
The Beatlesもまた次々とサイケデリックな楽曲を発表していきます。

まずは1966年5月30日にリリースされたシングルの"Rain"です。
(厳密には"Paperback Writer"のB面曲という位置付けですが。)

The Beatles - Rain (1966) [Psychedelic Rock]


"Paperback Writer"もけっこうサイケ色が強い楽曲ではあるのですが、
この"Rain"のほうが極めてはっきりとしたサイケデリックロックですね。

ダラダラとした酩酊感のあるサウンドとヴォーカルもさることながら、
最後にテープの逆回しのような工夫を入れてあるのも非常にサイケです。

そしてThe Beatlesは続く1966年8月5日にリリースした
アルバム"Revolver"でもサイケデリックな楽曲を多く発表します。

その代表とも言えるのが、この"Tomorrow Never Knows"でしょう。

The Beatles - Tomorrow Never Knows (1966) [Psychedelic Rock]


インド風の要素、哲学的でありながらも意味不明な歌詞、無意味なタイトル、
サンプリングなどのテクニックの多用、どこから見てもサイケそのものです。

ちなみにこの曲の歌詞は1964年の書籍である、
"The Psychedelic Experience: A Manual Based on the Tibetan Book of the Dead"
がモチーフとなっているそうです。

この書籍のタイトルにも明確に"Psychedelic"などとあるように、
この曲がLSDと東洋文化などを意識したことは間違いありません。

またこの曲は実際には先に紹介した"Rain"より先にレコーディングされており、
The Beatlesが最初に作った本格的なサイケデリックロックとも言われています。

これは同時にサイケデリックロックが生まれた大きな原動力である
「先進的で新しいロックを作りたい」という意識の結実でもありました。

そしてアルバム"Revolver"でもう一つ外せない曲が"Love You To"です。

The Beatles - Love You To (1966) [Psychedelic Rock / Raga Rock]


これはもう100%どこをどう切り取ってもインド音楽という仕上がりです。

この時期、The Beatlesのジョージ・ハリスンはインド音楽にドップリで、
それゆえ彼が作る曲はこうした完全なインド風な楽曲と増えていました。

この曲はまさに「ロックへのインド音楽の導入の完成形」と言っていいでしょう。

こうしてThe ByrdsやThe Beatlesによってサイケデリックロックが確立されましたが、
サイケデリックロックの音楽性はもっと多様で他にも様々なスタイルがあります。

次回はインド風とは違う方向から模索されたサイケデリックロックを見ていきましょう。

◎ここまでのサイケデリックロック形成の年表


1965.6.4 The Yardbirds - Heart Full of Soul (Single)
1965.7.30 The Kinks - See My Friends (Single)
1965.12.3 The Beatles - Norwegian Wood (This Bird Has Flown) (Album "Rubber Soul")
1966.2.25 The Yardbirds - Shape of Things (Single)
1966.3.14 The Byrds - Eight Miles High (Single)
1966.5.30 The Beatles - Rain (Single "Paperback Writer")
1966.8.5 The Beatles - Love You To, Tomorrow Never Knows (Album "Revolver")


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テーマ : 洋楽ロック | ジャンル : 音楽

コメント

 
かーとさま
サイケデリックロック2回目、最初にThe Byrdsの紹介ですね。フォーク・ロックの開祖がさらにこんな曲までやってたなんて驚きですね。おっしゃるとおり、イントロ部分が強烈です。なんか始まるぞって気分になります。これは面白いです。やっぱりあとから薬をやってたって告白してるんですね。

Shape of ThingsはYardbirdsから聞き慣れてるんですが、ロックスピリットを感じるし酩酊感みないなものはだいぶ薄いですね。内容が反戦、社会性を訴えた曲、当時の重要な位置づけというのはよくわかりますね。やっぱりギター好きなもんでJeff Beck Group,Gary Mooreと良く聞いてました。

ビートルズのRainになるとはっきりとサイケを感じますね。このけだるい酩酊感、歌い方もだいぶけだるいですね。テープ逆回しって確か結構ありましたけどその先駆者だったんですね。

リボルバー、前回先回りで申してしまいすみませんでした。Tomorrow Never Knows、ここまでなるとほんとサイケの極みですね。ありとあらゆる実験的要素を取り入れてますね。そしてLove You To、ほんと何度聞いても100%インド音楽ですよね。カバーしたミュージシャンがいて、エレキでシタールをカバーしてるんですがこれは原曲通りシタールのほうが断然好みです。

インド、東洋思想への傾倒、しかしよくこのようなムーブメントが起きたもんだと感嘆します。次回また楽しみにしております。
とら次郎のとうちゃんさん、こんばんは!

今回サイケデリックロックの歴史を掘り下げていく中で、
The Byrdsがサイケの先駆的な役割を果たしていたのは実は驚きでした!

The Byrdsがサイケに傾倒するようになったのはもちろん知っていましたが、
それが時期的にかなり早いというのは把握できていなかったのですよね!

なので、その役割の大きさを知ったのは今回の大きな収穫でした!(●・ω・)

"Shape of Things"はすでに知っておられたのですね!
The Yardbirdsにとっての代表曲でもありますもんね!

"Eight Miles High"と比べるとそこまでトリップ感はないので、
サイケというイメージとは結び付きにくいところはありますよね!

The Beatlesの"Rain"はThe Byrdsの"Eight Miles High"と同様に
「フォークロックの流れを汲んだサイケ」という感触が強いですね!

そういう点では"Rubber Soul"と"Revolver"の中間的な音という感じもありますね!
そういえばテープの逆回しもこの時期に始まったテクニック(?)なのですよね!

>リボルバー、前回先回りで申してしまいすみませんでした。

いえいえ、むしろ話題が先に出てきたので面白かったです!笑

"Tomorrow Never Knows"はこの時点における実験性と
サイケデリックな雰囲気の表現を徹底的に突き詰めた印象ですよね!

非常に思い切った曲だなという印象が強く残りますね!

そして"Love You To"もまたインド音楽として徹底してますよね!
この2曲は振り切った作りになっているところがいいですね!

サイケデリック文化と東洋思想が結びついたのは、
東洋思想や仏教、瞑想といった文化がサイケデリックにおける
「精神の解放」というテーマと重なったからでもあったのでしょうが、
それがロックとしても一つの形になっていったのは興味深いですね!

ではでは、コメントありがとうございました!(゚x/)

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