パンクロックができるまで 第3回

ということで、「パンクロックができるまで」の最終回である第3回です。

前回記事でSex Pistols、すなわちロンドンパンクの始まりまで紹介しましたが、
「Sex Pistolsの影響だけでイギリスでパンクバンドが広まったわけではなく、
実はもう一つ大事なピースがある」ということを書きました。

その大事なピースとなるのが、パブロック(Pub Rock)と呼ばれるシーンです。

パブロック、その名の通りイギリスのパブで演奏されていたロックです。
70年代中期にかけてこのパブロックが一つのシーンを形成していました。

このパブロックにはおおむね次の2つの特徴がありました。

・シンプルでストレートなロックを志向していた
・原初的なロックンロールからの影響を強く受けていた

「シンプルでストレート」、これはまさにパンクロックに通じる要素です。

一方で原初的なロックンロール志向が強かったという点は
実際には過去の音楽から影響を受けながらも、
過去の音楽へのリスペクトをあえて見せないようにしていた
後のパンクロックとは大きく異なるところと言っていいでしょう。

またパブというこじんまりとしたシーンにおいて
演奏していたというのもパンクロックとは異なるところです。

さて、そんなパブロックのバンドの代表格である
Dr. Feelgoodの代表曲"She Does It Right"を聴いてもらいましょう。

Dr. Feelgood - She Does It Right (1975) [Pub Rock / Proto-Punk]


まさに先ほど紹介した音楽性がモロに体現されていますね。

シンプルでストレート、そしてどこか原初的なロックンロールの味わいがある、
またそれなりに強い攻撃性を感じさせてくれるところも大きな特徴です。

ただ、この時点ではまだパンクロックとは一定の距離があるのも事実です。

この曲が出た時点で1975年、Ramonesが登場する1年前ですね。

しかしこのパブロックシーンから次のようなサウンドも顔を出してきます。

Eddie and the Hot Rods - Why Can't It Be (1976) [Proto-Punk / Pub Rock]


この曲が1976年、ニューヨークでRamonesが登場したよりは後ですが、
ロンドンでSex Pistolsがレコードをリリースする1977年よりは前の曲です。

しかしこれはもはやロンドンパンクそのものと言っていい音です。
メロディラインにはいかにもロンドンパンクっぽい箇所すらあります。

言われてみればたしかにパブロック的なロックンロール色はありますが、
それはかなり薄く、もうパブロックからパンクへの脱皮寸前の音です。

それゆえこの曲を含んだ彼らの1976年のアルバム"Teenage Depression"は、
「パブロックとパンクロックのミッシングリンク」とも評されます。

さて、この事実は次の2つの大きなポイントを教えてくれます。

まず一つ目は、一般的にロンドンパンクは、
「ニューヨークの地下シーンにおけるニューヨークパンクが
Sex Pistolsを経由してイギリスに伝わってきて形成された」
と理解されていますが、実はそれと同時期に
イギリスのパブロックシーンからもそれと同様の音が作られ、
この2つの流れが融合してロンドンパンクが完成したということです。

そして二つ目は、イギリスにはパンクと共通性の深い
パブロックシーンがすでに形成されていたことによって、
Sex Pistolsによる影響がパブロックシーンへと急速に広がる土壌があり、
そこからロンドンパンクのバンドが数多く形成され、
さらに大衆的人気を得ることに繋がっていったという点です。

パブロックシーンがあったことで、ロンドンパンクは加速的に広がったのですね。

ただしEddie and the Hot RodsとSex Pistolsの関係性の時系列は
やや難しいところもあり、1976年の2月にはすでに一緒にライブをしているなど、
1976年の段階でピストルズとパブロックシーンが相互に影響を与え合っていて、
それが1977年ぐらいまでの段階には完成していたとも解釈できます。

またSex Pistolsは初期の頃はパブロックバンドのオープニングアクトを務めることが多かったなど、
この点についてもパブロックとロンドンパンクの関係性の深さを知ることができます。

さて、このパブロックと極めて密接な関係にあるロンドンパンクバンド、
それがSex Pistolsと肩を並べる存在であるThe Clashです。

The Clashのフロントマンであるジョー・ストラマーは
もともとパブロックシーンでThe 101ersというバンドをしていたのです。

まさにパブロックがパンクロックへと脱皮していった例なのですね。

他にもエルヴィス・コステロもパブロックからパンクシーンへ移行した人物の一人です。

ということで、記事の締めくくりにそのThe Clashの曲を紹介しましょう。

The Clash - White Riot (1977) [Punk Rock]


ピストルズからの影響とパブロックの融合、
それがロンドンパンクに強烈な勢いをつけたことがわかる例ですね。

というわけで、パンクロックが生まれるまでを紹介いたしました。

【関連記事】
パンクロックができるまで 第3回
パンクロックができるまで 第2回
パンクロックができるまで 第1回

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テーマ : 洋楽ロック | ジャンル : 音楽

コメント

 
かーとさま
残る1つのピースはパブロックというムーブメントですね。シンプルでストレート、そこにパンクの要素が加わっていく。

最初のDr. Feelgoodの曲、これは完全にロックンロールですね。コード進行がそのままです。ただ歌い方とか雰囲気がパンクの要素がありますね。もっと前の曲と言われても違和感がありません。

次のEddie and the Hot Rodsの曲になるとやや変わってきますね。ノリ(ビート)はロックンロールを感じますけど、メロディラインからのつくり、つまりコード進行がロックンロールから離れてますね。だいぶパンクっぽいです。

3つめのClashになるとつくりもビートも完全にパンクロックですね。

ピストルズとの関係性なんかでいうと、完全に順番通りの変化というわけではないんですね。同時にお互いに影響しあってそこからクラッシュのような一つの完成系になっていったと。突然新たなものが現れるといってもそこにはやっぱり過程がありますね。ただ影響を受けてもその殻をやぶって作り上げるというのがすごいと思います。次回を楽しみにしております。
とら次郎のとうちゃんさん、こんばんは!

はい、このパブロックがロンドンパンクを語るうえで
外すことのできないもう一つの重要なピースですね!

このパブロックの土台がイギリスにあったことで、
パンクロックが広がりやすかったのはあるでしょうね!(●・ω・)

Dr. Feelgoodは骨格は完全にロックンロールですよね!
パブロックの持つロックンロール志向が非常によく出てますよね!

それを攻撃的にまとめているのがパンク前夜という感じでしょうかね!

Eddie and the Hot Rodsの曲にはもう少しロックンロール寄りのものもありますが、
ここで紹介した曲はロックンロール色はかなり希薄になっていますよね!

実はThe Clashの前身であるパブロックバンドのThe 101ersは、
Dr. Feelgoodにかなり近いロックンロール色の強い音楽性なのですよね!

なので、Sex Pistolsなどからの影響を受けて、
The Clashに移る際にロックンロール色を一気に消したのでしょうね!

ロンドンパンクの成立過程って、ピストルズを経由した
一本道のプロセスとして理解されるところがあるのですが、
実際にはその流れとパブロックからの変化が同時並行的に起きていた
そこがパンクロックの形成の面白いところと言えるでしょうね!

ではでは、今回も丁寧なコメントをありがとうございました!(゚x/)

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