パンクロックができるまで 第1回

「あるロックのジャンルができるまで」シリーズの第2弾は
70年代中期にイギリスとニューヨークで広がったパンクロックです。

「パンクロックって極端にシンプル化させたロックなのだから、
特にルーツみたいなものはないのでは」と思われがちかもですが、
実際にはパンクロックも成立するまでにいろいろな経緯があります。

決して突然変異的にSex PistolsやRamonesが登場したわけではないのですね。

ちょっとここですでにパンクに詳しい人向けの注意事項を書いておきますが、
今回のシリーズではPatti SmithやTelevisionなどのニューヨークシーンの
アートパンク系のミュージシャンについてはあえて扱っていません。

もちろんこれらのバンドもパンクシーンにおける重要な存在ですが、
こちらはピストルズやラモーンズ的なシンプルなパンクよりは
後のポストパンクに繋がる存在といった意義のほうが大きいので、
いずれ執筆するポストパンクの成立過程記事に回すこととしています。

さて、ということでまた話をパンクロックの成立過程へと戻しましょう。

パンクロックが目指したものはいくつかありますが、
その主要なものの一つが「シンプルでストレートで攻撃的」なことです。

あえてややこしいことは排除して、とにかくストレートに攻める音楽性です。

こうした音楽のルーツは60年代のガレージロックにさかのぼれますが、
ガレージロックはサイケデリックムーブメントが勃発するにしたがって、
サイケと一体化し、攻撃的ながらも実験性も内包するようになります。

要するに「シンプルなストレートさ」からは少し離れるのですね。

しかしこのサイケデリックムーブメントがやや下り坂に差し掛かった1969年に、
サイケ感を排除し、それ以前のガレージロックをさらに過激にしたバンドが登場します。

それがMC5で、彼らの代表曲である"Kick Out the Jams"は、
「シンプルでストレートで攻撃的」なロックに大きな歴史を刻みました。

そしてこれは後のパンクロックにも強い影響を与えることとなります。

MC5 - Kick Out the Jams (1969) [Garage Rock / Proto-Punk]


パンクロックの成立は一般的に1976年であるとされるので、
1969年の段階でこの音を鳴らしたのは驚きというほかありません。

最初の"Kick out the jams! motherfuc*er!"という掛け声からして突き抜けてます。

そしてMC5と同時期に、攻撃的なガレージロックバンドとしてThe Stoogesも誕生します。

The StoogesはMC5ほどではないものの、
1stアルバムから攻撃的なサウンドを鳴らしていましたが、
同時にまだサイケデリックな質感も残していました。

しかしそれが3rdアルバムの"Raw Power"において、
サイケ要素を大幅に減退させ、ストレートな攻撃性を
ひたすら追求したようなサウンドを鳴らします。

この"Raw Power"の名前の通りの「生々しいサウンド」は
間違いなくパンクに巨大な影響を与え、パンクの先鞭となりました。

そのアルバム"Raw Power"の代表曲がこの"Search and Destroy"です。
もう曲のタイトルからして、破壊性が前面に押し出されていますね。

Iggy and the Stooges - Search and Destroy (1973) [Proto-Punk / Garage Rock]


さて、これらのガレージロック系のバンド以外にも
パンクロックの成立に大きな影響を与えたジャンルがあります。

それがDavid Bowieをはじめとしたグラムロックです。

そのデヴィッド・ボウイは1971年の段階で、
パンクロックを先取りするようなスタイルの楽曲
"Queen Bitch"を制作しています。

David Bowie - Queen Bitch (1971) [Glam Rock / Proto-Punk]


攻撃性はあまり前面に出してはいないですが、
このシンプルな組み立ては演奏をもう少しパンク風にすれば
もう完全にパンクロックになりえるような形になっています。

David Bowieなどのグラムロックと、The Stoogesなどのガレージロック、
一見無関係そうですが、実は両者には繋がりがあり、
先に触れたThe Stoogesの"Raw Power"のアルバムのプロデュースには
このデヴィッド・ボウイが直接的に関わっているのですね。

おそらくボウイもThe Stoogesのストレートなサウンドから
少なからず影響を受け、それを取り込んでいったのでしょう。

さて、まだこの段階では「パンクに繋がる音楽」を紹介しただけですが、
「パンクロックができるまで」の第1回記事はここまでとなります。

次回の第2回では、この流れが加速してついにパンクが確立していきます。

というわけで、第2回記事もどうぞお楽しみにしてくださいませ。

【関連記事】
パンクロックができるまで 第3回
パンクロックができるまで 第2回
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テーマ : 洋楽ロック | ジャンル : 音楽

コメント

 
かーとさま
パンクロックの黎明期ですね。
パンクは全くと言っていいほど聞いてなく、ほんの少しはどこかで耳にするくらいです。ピストルズやクラッシュの存在は知ってますが80年前半たまにロッキンオンを買うとパンクバンドがずいぶんにぎわってましたね。

しかしMC5ってこれが1969年というのはびっくりです。もうこんな演奏をしてたなんて。これがイギーポップやDボウイに系譜が連なるんですね。

MC5もイギーもデトロイトとのことで自動車産業が発祥の下地にあったんでしょうか。余談ですが昔、仕事でデトロイトにはしょっちゅう行ってたのでなじみがあります。イギーは一時期すぐ隣のディアボーンというフォード自動車の本部があるところで子供のころ生活してたようですね。博物館とかいろいろあるんですがほとんど自動車関連のものばかりです。

もう一つ余談ですが出張中に会社からタダ券をもらいTOTOのコンサートを見たこともあります。野外でビールを飲みながらとても良かったです。

パンクから脱線した話ですみません。


とら次郎のとうちゃんさん、こんばんは!

へぇー、パンクロックはほとんど聴いてなかったのですね!

とすると、パンクがやや下火になってニューウェイブやシンセポップが勃興し、
それと同時期にヘヴィメタルがブームを迎えていった時期あたりが
とら次郎のとうちゃんさんのツボに入るタイミングなのでしょうかね!

自分はもともと90年代から洋楽ロックに入りましたが、
パンクは比較的早いタイミングで手を出したジャンルでしたね!(●・ω・)

しかしながらピストルズについてはすぐに気に入ったものの、
The DamnedやRamonesについてはイマイチその良さがわからず、
シンプル過ぎる音の作りにてこずったときもありましたね;

MC5が1969年の時点でこうした音を鳴らしていたのは驚きですよね!

1969年というとやっとLed Zeppelinが1stを出した時期ですから、
そこでこういう直線的な音を出していたのはすごいと思います!

ちなみにMC5はMotor City 5という意味だそうなので、
やはりデトロイトが自動車産業の都市であることは意識していたのでしょうね!

そしてとら次郎のとうちゃんさんがおっしゃるように、
パンクの種が撒かれたこの時期、デトロイトのシーンが大きく関係しているのですよね!

おそらくMC5とイギーポップは互いに刺激し合ってたのでしょうね!(●・ω・)

それにしてもデトロイトによく行っていたというのはうらやましいですね!
自分もいつかアメリカのいろんな街でロックの歴史などをたどってみたいです!

現地でコンサートを見たというのもいい思い出になりますよね!
そうした脱線した話もしてくださってOKですよ!

ではでは、コメントありがとうございました!(゚x/)

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