Alice in Chains - Down in a Hole 歌詞和訳

近況報告以外のブログ記事復活の第1弾は歌詞対訳コーナーにしました。

というのも、ブログを再開するにあたっては、
どうしてもこの"Down in a Hole"という曲の和訳から始めたかったのですよね。

もともと歌詞対訳コーナーの次の更新予定は別の曲だったのですが、
自分の生活に大きな変化があったことからこの曲が頭に浮かんできて、
「この曲の和訳をきっかけにして再開しよう」と考えたのですよね。

今回の"Down in a Hole"はAlice in Chainsというバンドの曲ですが、
前回紹介したNirvanaと同じく、90年代のグランジシーンで活躍したバンドです。

簡単に言えば、ダークでシリアスな世界観を持ったバンドですね。

自分はそうした世界観を持ったバンドが特に好きということもあって、
Alice in Chainsの曲の和訳はこのコーナーでも取り上げたいと思っていました。

もともとは別の曲を最初に取り上げる予定だったのですが、
今回はどうしてもこの曲がいいということで予定を変更しました。

歌詞の意味については一部の箇所を除いておおむね読みやすいので、
まずは楽曲のリンクを貼りつつ、歌詞の和訳をそのまま書いていきます。

Alice in Chains - Down in a Hole (1992) [Grunge]


Alice in Chains - Down in a Hole lyrics 歌詞和訳



Bury me softly in this womb
僕が生まれたところへとそっと葬っておくれ
I give this part of me for you
僕の一部を君へと捧げるよ
Sand rains down and here I sit
砂が降り注いで、僕は埋められていく
Holding rare flowers
In a tomb... in bloom
そこにしかない咲き誇る花を抱きながら、墓となる穴の中で

Down in a hole and I don't know if I can be saved
穴の中で生気を失い、救われることができるかすらもわからない
See my heart, I decorate it like a grave
僕の心を見ておくれ、墓のように彩ったこの心を
You don't understand who they thought I was supposed to be
君は知らない、皆が僕をどんな存在と思っていたかを
Look at me now I'm a man who won't let himself be
でも今の僕を見ておくれ、僕はもう自分自身であることすらできない存在なんだ

Down in a hole, feeling so small
穴の中で生気を失い、縮こまるような思いで
Down in a hole, losing my soul
穴の中で生気を失い、魂も消え失せそうで
I'd like to fly
ここから飛び立ちたい
But my wings have been so denied
でも僕の翼はとうに消えてしまっているんだ

Down in a hole and they've put all the stones in their place
穴に落ちて生気も失い、皆がそこにたくさんの石を並べていった
I've eaten the Sun so my tongue has been burned of the taste
太陽を食らってしまったがゆえに、僕の舌はもう焼け落ちてしまってるんだ
I have been guilty of kicking myself in the teeth
そして自らの歯を蹴り飛ばして崩した罪も背負ってる
I will speak no more of my feelings beneath
だからもう僕は地中深くで自分の思いを口にすることすらできないんだ

Down in a hole, feeling so small
穴の中で生気を失い、縮こまるような思いで
Down in a hole, losing my soul
穴の中で生気を失い、魂も消え失せそうで
I'd like to fly
ここから飛び立ちたい
But my wings have been so denied
でも僕の翼はとうに消えてしまっているんだ

Bury me softly in this womb
僕が生まれたところへとそっと葬っておくれ
(Oh I want to be inside of you)
(ああ、僕を君と一体の存在にさせておくれ)
I give this part of me for you
僕の一部を君のために捧げるよ
(Oh I want to be inside of you)
(ああ、僕を君と一体の存在にさせておくれ)
Sand rains down and here I sit
砂が降り注いで、僕は埋められていく
(Oh I want to be inside of you)
(ああ、僕を君と一体の存在にさせておくれ)
Holding rare flowers in a tomb... in bloom
そこにしかない咲き誇る花を抱きながら、墓となる穴の中で
(Oh I want to be inside)
(ああ、僕を君と一体の存在に)

Down in a hole, feeling so small
穴の中で生気を失い、縮こまるような思いで
Down in a hole, losing my soul
穴の中で生気を失い、魂も消え失せそうで
Down in a hole, feeling so small
穴の中で生気を失い、縮こまるような思いで
Down in a hole, out of control
穴の中で生気を失い、動くことすらできなくなって

I'd like to fly
ここから飛び立ちたい
But my wings have been so denied
でも僕の翼はとうに消えてしまっているんだ

◎Alice in Chains “Down in a Hole”の歌詞和訳の解説


この曲の大まかな意味は和訳を読むだけでおおよそ伝わるとは思います。

これは「死にゆく存在が、残された大切な人に向けて思いを伝えている曲」ですね。

すなわち、今にも命が失われそうな、あるいは命を失った存在の立場から、
その残された命や魂を通じて残された人へとメッセージを伝えているわけです。

とはいえ、この曲を聴く多くの人はまだ命が残された存在ですから、
この曲は「命が失われそうな人」が自らの立場から感情移入する曲というよりは、
大切な存在(人でも動物でも)を失った、あるいは失いそうになっている人が
「あの子は自分にどんな思いを抱きながら旅立ったのだろう」と考え、
そこに思いを巡らすことに対して寄り添う曲と言ったほうがより適切でしょう。

だから大切な人でも、ペットという家族でも、それを失って間もない人にとって
その心に寄り添ってくれる、救いを与えてくれる曲ということができるでしょう。

私がこの曲の歌詞で最も好きな箇所は、
>Oh I want to be inside of you
なのですよね。

命が失われ、肉体も消えそうになっている存在が、残された人に対して、
「僕はもう命は失われるけど、魂として君の中で一体となって生きたいんだ」
という願いを言葉にしているのですね。

自分はいつもこの箇所を聴くたび、胸がギュッと締め付けられるような思いになります。

ただ、実はこの曲は作者であるAlice in Chainsのジェリー・カントレルによると、
もともとは彼自身のかなり長い間恋愛関係にあった女性との別れがテーマだったそうです。

とはいえ、この曲をストレートに恋愛と別れの歌詞として読むのは難しく、
おそらくはその別れを死にたとえて、別れ行く自分=死にゆく自分の立場から、
大切な相手へのメッセージを送るという歌詞として組み立てたのでしょう。

なので、やはり全体としては「死にゆく存在から残された人へのメッセージ」
として書かれているのは間違いなく、あえてそこまで抽象化していることを考えても、
ジェリー・カントレルの恋愛と別れの話はあくまでこの曲の裏話として受け取り、
歌詞は「死にゆく存在から残された人へのメッセージ」として読めばいいでしょう。

今回の和訳では、いつものように「俺」と「おまえ」という表現を使わず、
「僕」と「君」という表現にしたことも一つの特徴になっています。

これは「自分にとって大切な死にゆく存在」が動物でも女性でも、
自分の中で感情移入しやすくするには「俺」とするよりも、
「僕」としてほうが受け入れられやすいだろうと感じたためです。

「俺」だと、どうしても「人間の男性」のイメージが強すぎますからね。

言葉遣いを普段よりやわらかめにしたのもそのあたりが理由です。

◎文法事項の解説


この曲はなかなか文法的にも厄介なところも多く、
ちょっと悩ませられる言葉のチョイスも多いのですよね。

なので、いくつか迷ってしまったところもありますが、
数行を続けて眺めて読むと意味がわかることもあるなど、
なかなかクセのある表現が多用されているといった印象です。

>Bury me softly in this womb

まずここ、文法事項としては簡単なのですが、
なぜいきなりwomb(子宮)が出るのかに迷いました。

この箇所は基本的に埋葬が描写されている部分ですから、
womb(子宮)はちょっと違和感があるのですよね。

でもこれは「死によって、自分を生まれたところ(=子宮)へと帰してほしい」
というメッセージととらえると、なるほどと思えるのですよね。

そう考えると、womb(子宮)という言葉を選んだことにセンスを感じますね。

>Sand rains down and here I sit

このrainは「雨が降る」という動詞と見ていいでしょう。
すなわち、「砂が雨のように降り注いだ」ということですね。

もちろんこれは命を亡くした者を穴に埋めて砂をかける描写ですね。

>Down in a hole and I don't know if I can be saved

実はこの曲の最も難しいところはdownの解釈かもしれません。

シンプルに「穴に落ちて」と考えてもいいでしょうけども、
もうすでに墓の穴の中には入っている状況とも読めるので、
「その穴の中でdownな状態」と考えるほうがいいのではと、
それで「穴の中で生気を失い」という訳を採用しました。

I don't know if I can be saved の if は「~かどうか」の意味の
名詞節を導く接続詞であると判断すればいいでしょうね。

>You don't understand who they thought I was supposed to be
>君は知らない、皆が僕をどんな存在と思っていたかを
>Look at me now I'm a man who won't let himself be
>でも今の僕を見ておくれ、僕はもう自分自身であることすらできない存在なんだ

ここは今回の訳で特に迷った部分の一つですね。
2つ目の文についてはそこまで難しくはないのですが。

1つ目の文でまず鍵になるのは who の存在ですよね。

先行詞の the man が省略された関係代名詞としてとらえるか、
疑問詞 who に導かれた節としてとらえるかがまず問題になりますが、
前者だと意味が通らないので、これは後者だと考えられます。

そして who 節を眺めると、この who は supposed to be の目的語、
すなわち [they thought I was supposed to be whom] のように考えて、
訳していくべきということになるでしょう。

しかしこうなると supposed to be をどうとらえるかが厄介なのですよね。
supposed to be って、けっこういろんな解釈の仕方がありますからね。

特にこの一文だけを見ると、意図を読むのが非常に難しいのです。

でも次の文を見ると、2文目が「今の自分」を表していて、
1文目が「過去の自分」(生きていた頃の自分)を指しているとわかります。

そのあたりを考慮して、supposed to be はあまり深く考えずシンプルに訳しました。

2文目は let himself be が鍵になりますが、
これは「自分自身のままでいる」というふうに解釈できますね。

let ○○ be の解釈は日本人には慣れないところがありますが、
この曲の場合はけっこうわかりやすい感じで使われていると言えますね。

>I've eaten the Sun so my tongue has been burned of the taste
>I have been guilty of kicking myself in the teeth
>I will speak no more of my feelings beneath

急に解釈が難解な表現が登場する、この曲で最も訳しにくい箇所です。

これは1文ずつ解釈するより、最後の文に着目したうえで、
トータルとして何が言いたいのかを読み取るのがいいでしょう。

この3つの文、よく見ると全部「口」にフォーカスを当てているのですよね。

1文目は「舌」、2文目は「歯」、3文目は「口が発する言葉」です。

すなわち、この3文の趣旨は「もう自分は命が失われて、
舌も歯を含めて口がボロボロになってしまっていて、
そうであるがゆえに言葉を伝えることもできない」
というところにあると読み取ることができるでしょう。

そうすると、1文目の eat the Sun や、2文目の kicking myself in the teeth などの箇所は、
本当に「太陽を食べた」とか「自分の歯を蹴り飛ばした」わけではなくて、
舌や歯がボロボロであることを示すための比喩的な表現だと読めます。

eat the Sun にはあまり使われない熟語表現として、
「ドラッグの大量摂取」という意味があるそうですが、
「舌が焼けた」などの表現も見るにそれとは関係はなさそうです。

be guilty は feel guilty の「罪悪感を感じている」とは異なり、
「実際に罪を負っている」という意味になるので、そちらを採用しました。

kick ○○ in the △△ は「○○の△△を蹴った」という意味です。
こうした表現は英語圏の人はけっこうよく使うのですよね。

kick 以外にも slap me in the face みたいに書くと、
「俺の顔をはたいた」という意味になります。

>I will speak no more of my feelings beneath

ここは beneath の訳にちょっと迷ったのですが、
beneath はあくまで高低の「低い」という意味のみで、
精神的な意味での「低い」は意味しないようなので、
「穴の中で感じている思い」みたいに考えました。

◎まとめ


Alice in Chainsの曲はもっとヘヴィでドロドロしたものが多いのですが、
この曲は彼らの中では比較的しっとりとして聴きやすいですし、
曲のテーマ性もけっこう広く受け入れられやすいとは思うのですよね。

どんな人間でも大切な存在を失うときというのはやってきますし、
そのことについて思いを馳せるときというのは必ずありますからね。

そういうときに支えになってくれる曲があるというのはありがたいことだとも思いますし。

最後にこの曲のアンプラグドライブバージョンも貼っておきます。

アコースティックのみで演奏しているのでより聴きやすいですし、
セットが葬式を模していることもあって、雰囲気がよく合っているのですよね。

この曲の持っている良さがより伝わりやすいのではないかとも思います。

Alice in Chains - Down in a Hole (MTV Unplugged) (1996) [Grunge]

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テーマ : 洋楽ロック | ジャンル : 音楽

コメント

 
何かに取り組むのは心の痛みをしばし忘れるから良い事よね。いっぱい時間をかけても失った哀しみってなくはならないけれど、心の中にいるから。
鳥天さん、こんばんは。

なかなかショックなことがあったところから、
普通の日常を取り戻していくというのは難しいものですが、
それゆえ亡くなった母に捧げるという思いも持たせつつ、
再び活動を始めるという意味を込めて今回の記事を書きました。

そのあたりのことは記事内ではあまり触れてはいないですが。

「命が消えた後も、その人は大切な存在と思っている人の一部となり、
その中で生き続ける」というテーマを持った曲でもあったので、
そういう意味ではこの曲の訳をしたことが一つのセラピーにもなりましたね。

それでは、コメントありがとうございました。
かーとさま
お母さまが亡くなられたこと、いろんな思いがあると思いますがその心情を語ってくれる曲なんですね。きっとこの曲はお母さまの思い出とともにずっと心から離れることがないでしょうね。私の母は15年前に亡くなりましたが亡くなる時期によく聞いていた曲があり、母とその曲がセットになっていて残ってるんです。今のその曲を耳にすると母を思い出します。

さてDown in Hole、ずいぶん細かく調べられて和訳されましたね。私も少し調べたんですが作者ジェリー・カントレルのそれまでの人生のなかで3つの印象深い個人的なできごとのうちの一つがきっかけだそうですね。作りてのきっかけはいろいろありますが受けてがそれをどう感じ、どう解釈するかはいろいろあって当然ですね。かーとさんの今回のお母様の逝去からそう理解できるのはよくわかります。

Unpluggedのアコースティックバージョンがとてもいいですね。私は自分でも演奏するので作り手側として感じることがあるんですがこの曲はアコースティックギターを使って作ってますね。こっちのほうがしっくりきます。ちなみにジェリーカントレルが弾いてるギターはギルドなんですが、これは音が太いのが特徴なんです。私が中学生のとき最初に使ったのはこのギルドのコピータイプのギターでやはり音が似てるんですね。

かーとさんはグランジバンドが一番のお気に入りなんですね。90年代前半がたぶんかーとさんの青春時代、一番のめりこんだ分野で今も体の一部なんでしょうね。私は1980年前後が青春時代で一回り前ですがそのころの曲が体に染みついてます。

こないだデペッシュモードの紹介があり、その際触れていたTears For Tearsは好きでShoutのアルバムをリアルタイムでよく聞いてました。ダークでシリアスな感じは私も好きです。

いろいろ手続きがあって大変でしょうが落ち着かれましたらいろいろ音楽のことを語り合いたいと思います。こちらのニャンコも気にかけていただいてどうもありがとうございます。

急に寒くなってきましたがお体には十分気をつけてくださいね。長くなってしまいました。

とら次郎のとうちゃんさん、こんにちは。

死を連想するときに自分の中で思い浮かぶ曲というのはいくつかあるのですが、
母の死に際して頭の中で自然と流れたのがこの曲だったのですよね。

葬儀場などに行く際にもこの曲がふと頭の中に流れることがありました。

曲ってときどきある場面と密接に結びつくことがありますよね。
その曲を聴くたびにその場面を思い出してしまったりとかしますよね。

この曲はもともとジェリー・カントレルと長い間関係のあった
女性との別れがきっかけで作られたということではありますが、
ジェリー・カントレルは歌詞をあえて抽象的に書くことが多く、
その出来事をどう書くかと考えたときに、
「死にゆく自分からの送る言葉」のように書いたのでしょうね。

それゆえ一見すると普通の別れの曲には見えにくくなって、
一般的な「死にゆくものが大切な人に残す言葉」のような曲になって、
それが結果的に広く愛されるメッセージ性を持ったとも言えそうですね。

Alice in Chainsはヘヴィーでドロドロとした曲が多いのですが、
一方でジェリー・カントレルはアコースティック色が強い曲を書くのも得意で、
アコースティックメインのアルバムも2つ残しているぐらいなのですよね。

なので、この曲もとら次郎のとうちゃんさんがおっしゃるように、
そうしたアコースティックのアプローチで書かれたものなのでしょうね。

自分が洋楽ロックを聴くようになったのは完全に後追いで、
Alice in Chainsもおそらく2001年ぐらいに聴き始めたと思うのですが、
自分の中では様々な年代の中でも90年代が最もフィットするところがあり、
「自分は90年代の人間だな」と感じることはよくあるのですよね。

年代的には90年代のリアルタイマーよりも少し下ぐらいになるのですが。

Tears for Fearsは80年代のバンドの中でも特に好きなのですよ。

とりわけ1stアルバムから3rdアルバムまでは今でもよく聴きますね。

大衆的な人気を得ながらも、世界を冷めた目で見るような感覚があって、
人間の持つ闇の部分を浮かび上がらせるのを得意としていますよね。

実は自分は90年代型でありつつも、80年代的なシンセサウンドも好きで、
それゆえにTears for Fearsのしっとりしたシンセサウンドは合いますね。

以前の記事の話題などもコメント欄で書いてくださることも歓迎ですし、
ちょっと脱線気味な話も歓迎なので、今後もよろしくお願いいたします。

これからもとら次郎のとうちゃんさんとの音楽談義を楽しみにしています。

それでは、とても丁寧で心のこもったコメントをありがとうございました。

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