フォークロックができるまで 第2回

さて、前回の第1回記事でThe ByrdsやThe Turtlesといったバンドが
フォークの曲をロックのスタイルでカバーすることによって
フォークロックという両者の垣根を超えた音楽を確立したことを解説しました。

しかし、まだこの段階では「フォークを基盤にロックのスタイルで演奏する
新進気鋭のフォークロックと呼ばれるバンドが出てきた」というだけで、
あくまでそうした「新しいフォークロックバンド」のみの動きでした。

しかし、この動きは従来のフォークミュージシャンにも大きな刺激を与えます。

そしてフォークの第一人者であったボブ・ディランは
次のアルバム"Highway 61 Revisited"でその動きに明確に答えました。

ロックのスタイルを大幅に導入し、従来のフォークの殻を大きく破り、
それとともにフォークロックの傑作"Like a Rolling Stone"を発表したのです。

まずは何よりそれを実際に聴いていただきましょう。

Bob Dylan - Like a Rolling Stone (1965) [Folk Rock]


ボブ・ディランとしての個性を受け継ぎ、フォークの香りを残しながら、
一気に壁を壊しロックを取り入れフォークとの見事な融合を果たします。

この「フォークからのフォークロックへの回答」が生まれたことで、
真にフォークロックは確立したと言ってもいいでしょう。

さて、フォークを代表するもう一つのミュージシャンとして
あのサイモン&ガーファンクルもいます。

彼らはいったいフォークロックの動きにどのように答えたのでしょうか。

Simon & Garfunkelは1stの"Wednesday Morning, 3 A.M."ではほぼ純粋なフォークでした。

その収録曲である"The Sound of Silence"を聴いていただきましょう。

Simon & Garfunkel - The Sound of Silence (1964) [Folk]


改めて聴くとフォークギターのみの非常にシンプルな構成ですよね。
この曲は教科書などにも載っているので多くの人が知っていますね。

しかしこの曲は次の2ndアルバムで再レコーディングされることになります。
なんとそこでは、この曲が一気にフォークロックへと生まれ変わったのです。

Simon & Garfunkel - The Sound of Silence (1966) [Folk Rock]


エレクトリックギターになったことで厚みが増し、ドラムによってロックらしさが高まり、
まさにこの曲が基本の構成を変えずにフォークロックに生まれ変わったことがわかります。

これもまたフォークのロック化を象徴する曲の一つと言っていいでしょう。

もっともこれは純粋なフォークだった原曲の"The Sound of Silence"を受けて、
ボブ・ディランの"Like a Rolling Stone"にも関わったプロデューサーのトム・ウィルソンが
半ば勝手に行ったリミックスだったりもしたわけですが。

このバージョンはもともとシンプルなフォークだった曲を
エレクトリックなロックにアレンジしたというものでしたが、
この2ndアルバムでは他にも優秀なフォークロックがたくさんあります。

そんな新たに作られたフォークロックについても見ていきましょう。

Simon & Garfunkel - I Am a Rock (1966) [Folk Rock]


最初はフォークギター一本で始まりフォークらしいと思わせながら、
途中でドラムとエレクトリックギターやオルガンが入って、
一気に「フォークグループによるフォークロック」らしいサウンドになります。

これもまたフォークロックの確立に大きな役割を果たした曲と言えるでしょう。

フォークロックの誕生による影響はフォークミュージシャンのみにとどまりませんでした。

逆にロックバンドがフォークやフォークロックに接近する動きも生み出したのです。

その代表格とも言えるのが、The Beatlesの"Rubber Soul"というアルバムです。

ロックの歴史の中でも非常に重要視されているアルバムの一つですが、
これは実は「The Beatlesによるフォークロックへの回答」という側面を持っており、
明確にフォークやフォークロックに接近した曲が多く含まれています。

その中から1曲、いかにもThe Byrds流のフォークロックを意識した曲を紹介しましょう。

前回記事で紹介したThe Byrdsの"Mr. Tambourine Man"あたりを思い浮かべると、
その影響や共通性などをしっかりと感じ取ることができるだろうと思います。

The Beatles - Nowhere Man (1965) [Folk Rock]


このあたりの新しい音楽スタイルの昇華の仕方であったり、
それを新たに自分のものにする上手さはさすがThe Beatlesですね。

ということで、フォークロックの成り立ちについてのお話でした!(゚x/)

【関連記事】
フォークロックができるまで 第2回
フォークロックができるまで 第1回

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テーマ : 洋楽ロック | ジャンル : 音楽

コメント

 
おはようございます。ボブ・ディランLike a Rolling Stone聞いて参りました。聞き覚えのある曲ですが、曲のポリシーは初めて知りました。上流階級に属していた女性の転落を描いた曲なのですね。
反体制的な社会批評性と、意識変革を促す名曲中の名曲と捉えています。この曲がその後に及ぼした影響は計り知れないものがあるのですね。フォークロックが社会に与える影響力という大きな壁を破ったようで、一大センセーショナルと言ってもいいのではないでしょうか?

サイモン&ガーファンクルは穏やかでしんみりとした曲が多いですね。若い頃、友人宅のステレオ(レコード)でよく聞いたのを記憶しています。心を平穏にしてくれる音楽は素敵です。Mrs. Robinsonなどもありましたね。

The Beatlesですが、けして人真似をせずに自らの独自性に磨きを掛ける。そして多くの人の感性を惹きつける。フォークとフォークロックの違い、この記事を読むまでは知らなかったのですが、何となく朧ですがわかるような気になりました💡

◎まとめ◎
お陰様で本日も知見にあふれた記事に触れさせて頂きました。かーとさん、今週もいい週になることを祈念しています。🙏ありがとうございます。




かーとさま
ボブディランのこの曲はもちろん知ってます。このころのフォーク側のロックに対する反感が結構あったようですね。電気楽器はけしからん!と。フォークの大御所Pシーガーがなんとかフェスティバルの舞台裏で裏切られたと思ったディランのエレキのコードを斧で切断しようとしたなんて話、有名ですね。

エレキにMブルームフィールドが参加してるんですね。実は私ギターが好きで自分でも演奏するんですがブルースギターで有名な人ですね。やはりTウイルソンが彼とオルガンのAクーパーを引っ張ってきてそれがすごくマッチして貢献したらしいですね。

次にサイモンとガーファンクル、これは私が中学生だった1970年代半ばずいぶん聞きましたよ。家に兄がかったレコードがあったんです。楽譜を買ってきて弾き語りもしてました。中学校のフォーククラブの部長をしてたんですが、文化祭でほんとはS&Gを演奏したかったんです、しかし周囲が当時国内ではやってたフォークバンドNSP(ニューサディスティックピンク)をやりたい!と押し切られてあきらめたんです。懐かしい思い出です。

サウンドオブサイレンスはどちらかというとアコースティック版が好みですが大勢の人に聞かせるにはエレキ版がいいでしょうね。ヒットした理由もわかります。しかしTウイルソンが本人たちに内緒で勝手にエレキとかドラムとかいれてダビングを重ねたというのが驚きです。I am a Rockもイントロの部分なんか好きでよくまねてました。いい曲ですね。個人的には一人で最後まで弾き語りができるApril come she will が心に染み入るで好きなんですね。ちょっと健康上の問題で最近はずっとギターを弾けてないんですが、いつかはyoutubeに弾き語りをアップしたいと思っています。

ビートルスのNowhere Man なるほど言われてみるとThe Byrdsの
"Mr. Tambourine Manと重なるところがありますね。

フォークロックの成り立ちのお話、いろんな逸話があって大変興味深いものでした。実は裏話も個人的に興味があるんですよ。またこのような談義ができたらうれしく思います。



横町さん、こんばんは。

"Like a Rolling Stone"を聴いてくださりありがとうございます。
そして曲のポリシーまでお調べになってくださったのですね。
感謝いたします。

>上流階級に属していた女性の転落を描いた曲なのですね。
>反体制的な社会批評性と、意識変革を促す名曲中の名曲と捉えています。
>この曲がその後に及ぼした影響は計り知れないものがあるのですね。
>フォークロックが社会に与える影響力という大きな壁を破ったようで、
>一大センセーショナルと言ってもいいのではないでしょうか?

そうなのですよね。

ボブ・ディランは社会性の強い歌詞を書く人物ではありましたが、
この"Like a Rolling Stone"はその完成形とも言えるものだと思います。

それと同時に横町さんがおっしゃるように、
ロックバンドに与えた影響も非常に強いものだと思います。

1966年からはサイケデリックロックが一大ムーブメントを築き、
多くのロックバンドが社会的なテーマを取り入れるようになりましたが、
そうした動きにこの曲が与えた影響も実に大きかったと思います。

>サイモン&ガーファンクルは穏やかでしんみりとした曲が多いですね。
>若い頃、友人宅のステレオ(レコード)でよく聞いたのを記憶しています。
>心を平穏にしてくれる音楽は素敵です。Mrs. Robinsonなどもありましたね。

Simon & Garfunkelの曲はすごく優しいですよね。

自分は初めてS&Gを聴いたのはおそらく中学校の音楽の授業で、
きっちりと聴くようになったのはそれよりもかなり後なのですが、
メロディの組み立てが上手い、素晴らしいグループだと思います。

そしてMrs. Robinsonも良い曲ですよね。私も大好きです。
S&Gは本当に良い曲を多く作っているグループですよね。

>フォークとフォークロックの違い、この記事を読むまでは知らなかったのですが、
>何となく朧ですがわかるような気になりました

実は私も10年ほど前までは両者の区別があまりついてなかったのですが、
改めて歴史をたどる中で、「このようにフォークロックって生まれたんだな」と
それを知ることによって、より味わい深く楽しめるようになりましたね。

私達が普段触れている音楽には、ミュージシャンによる
こうした様々な新しい試みがあるのだなと思わせてくれました。

それでは、とても丁寧なコメントをありがとうございました。
とら次郎のとうちゃんさん、こんばんは!

やはり"Like a Rolling Stone"は知っていましたか!
ロックの歴史の中でも特に重要な曲の一つですからね!

>このころのフォーク側のロックに対する反感が結構あったようですね。電気楽器はけしからん!と。

そうそう、そうなんですよね!

ファンの間でもディランがエレクトリックギターを使うことへの不満が大きく、
ブーイングが起きて、それに対してディランが怒ったこともあるようですしね!

だから私達が思っている以上に当時のフォークとロックの溝は深くて、
フォークロックの確立は本当に革新的なものだったのでしょうね!

>エレキにMブルームフィールドが参加してるんですね。
>実は私ギターが好きで自分でも演奏するんですがブルースギターで有名な人ですね。

へぇー、とら次郎のとうちゃんさんもギターを演奏されるのですね!

実はこれも裏話があってブルームフィールドがブルージーなギターを弾こうとしたら、
ディランから「あ、そういうB.B.キングみたいなのいいから」って
ツッコまれてシンプルに弾いたなんて話もあるのですよね!笑

>次にサイモンとガーファンクル、これは私が中学生だった1970年代半ばずいぶん聞きましたよ。
>家に兄がかったレコードがあったんです。

おぉ、サイモン&ガーファンクルをほぼリアルタイムで聴いていたのですね!

自分は完全に後追い、しかも2000年代に入ってから聴き始めたので、
そうしたリアルタイムの体験を聞けるというのは非常に貴重です!

>しかしTウイルソンが本人たちに内緒で勝手にエレキとかドラムとかいれてダビングを重ねたというのが驚きです。

これは実はこの記事を書くためにいくつかの情報を
精査していたときに知って自分でも驚きましたね!(●・ω・)

Tウィルソンとしては、「今ちょうどフォークロックが来てるし、
この曲もそうすればもっと人気が出るのでは」なんて考えたのでしょうね!

実際にそれが大成功したわけですから正解ではありますよね!

>I am a Rockもイントロの部分なんか好きでよくまねてました。いい曲ですね。
>個人的には一人で最後まで弾き語りができるApril come she will が心に染み入るで好きなんですね。

"I Am a Rock"もいいですよね!
フォークとロックの良さを上手く合わせてますよね!

"April Come She Will"もいい曲ですよね!
ほんとにS&Gはシンプルな中でのメロディの組み立てが秀逸ですよね!

ちなみに自分は密かに
"The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)"が大好きだったりします!

何気にこの曲、ソフトロックの元祖的な曲だとも思うのですよね!

>ちょっと健康上の問題で最近はずっとギターを弾けてないんですが、
>いつかはyoutubeに弾き語りをアップしたいと思っています。

こうしてお互い音楽の話をしてるうちに音楽熱が盛り上がって、
そしてとら次郎のとうちゃんさんの健康面もアップして
再びギターが弾けるようになるといいですね!

自分としてもそう願っております!

>ビートルスのNowhere Man なるほど言われてみるとThe Byrdsの
>"Mr. Tambourine Manと重なるところがありますね。

これも実は今回の記事を書くうえでいろいろ聴き直してみて、
「あ、これめっちゃThe Byrdsぽく演奏してる!」と思って選びました!

このあたりの遊び心って面白いですよね!

>フォークロックの成り立ちのお話、いろんな逸話があって大変興味深いものでした。
>実は裏話も個人的に興味があるんですよ。またこのような談義ができたらうれしく思います

こちらこそいろいろと話してくださりありがとうございます!

またコメントなどを通じていろいろな話をしましょうね!(゚x/)

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