フォークロックができるまで 第1回

さて、これまで「ロックの歴史」シリーズを通じて、
それぞれの時代ごとにどのようなスタイルの音楽が生まれ、
それがどのようなミュージックシーンを作ってきたか語ってきました。

しかしながら、それらがどのような音楽であるか言葉で語りながらも、
それを感覚として理解することは難しい文章でもありました。

このように「ロックの歴史」シリーズはそれだけで全体像をとらえるのは難しく、
歴史の流れをおおまかに知る点ではそれなりに役に立つとは思えるものの、
それを感覚として体や耳に染みつけるところにまでは至らないものでした。

なので、ここからは「ロックの歴史」の中で紹介した様々なジャンルを
それがどのように形成されていったか、どのように確立されていったかを
実際の音楽動画紹介も含めながら伝えていきたいと思っています。

まずは60年代中期に形成された「フォークロック」について見ていきましょう!

60年代前半まではフォークとロックは完全に別々の音楽として存在していました。

それが60年代中期にかけて、フォークとロックの間の垣根が崩れて、
フォークをロックのスタイルでもって演奏するようになったり、
フォークミュージシャンがロックを取り入れるケースが出てきました。

このようにして生まれたのが、フォークとロックを融合した
「フォークロック」というスタイルです。

これ以降はエレキギターやドラムなどを使わない純粋なフォークは少なくなり、
フォークを土台としたミュージシャンもロックの様式を取り入れるのが一般的となります。

さて、この「フォークロック」はどのようにして生まれていったのでしょう。

まずはフォークの第一人者であるボブ・ディランの
"Mr. Tambourine Man"という曲を聴いてもらいましょう。
(5thアルバム"Bringing It All Back Home"に収録)

これは紛うことなき、ドラムなども入らない実に純粋なフォークです。

Bob Dylan - Mr. Tambourine Man (1965) [Folk]


そしてこのボブ・ディランの"Mr. Tambourine Man"を
ロックのスタイルでカバーしたバンドがいました。

それがフォークロックのスタイルを確立したとも言える存在であるThe Byrdsです。

まずはそちらを実際に聴いていただきましょう。
原曲であるボブ・ディラン版との違いがはっきりと伝わると思います。

The Byrds - Mr. Tambourine Man (Bob Dylan cover) (1965) [Folk Rock]


このバージョンだけを聴くと、ほぼギター一本のみの
純粋なフォークのカバーだとは気付かないかもしれませんね。

それぐらいに上手くロックのスタイルへと落とし込んでいます。

一般的なロックに比べると、緊張したようなピリッとした感触をあえて減らし、
ややのんべんだらりとした雰囲気にしているところが特徴ではありますが。

いずれにしても、このカバーがフォークとロックの垣根を壊す大きなきっかけとなりました。

面白いのはカバー曲によってイノベーションを起こしたという点ですね。

普通は音楽的なイノベーションはオリジナル曲で起きることが多いですが、
「フォークをロックの手法でカバー」したからこそ音楽的な変革が起きたのですよね。

そしてこうした「フォークをロックの手法でカバーする」のは、
このThe Byrdsにとどまらず、他のバンドにも広がっていきました。

そのもう一つの代表とも言えるのが"It Ain't Me Babe"という曲です。

まずはオリジナルであるボブ・ディラン版を聴いてくださいませ。
(4thアルバム"Another Side of Bob Dylan"に収録)

Bob Dylan - It Ain't Me Babe (1964) [Folk]


これはもう非常に原初的なスタイルのフォークと言っていいでしょうね。

そしてこの曲をThe Turtlesというバンドがロックのスタイルでカバーしました。
The Byrdsとはまたちょっと違った切り口ですが、明確にロックになっていますね。

The Turtles - It Ain't Me Babe (Bob Dylan cover) (1965) [Folk Rock]


こうしたフォークとロックの垣根を壊す動きは、
The ByrdsやThe Turtlesのようなフォークロックのバンドを生むだけでなく、
ボブ・ディランをはじめとしたフォークのミュージシャンにも影響を与え、
さらに従来のロックバンドがフォークに接近するきっかけをも作りました。

次回の「フォークロックができるまで 第2回」ではその動きを見ていきましょう!(゚x/)

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テーマ : 洋楽ロック | ジャンル : 音楽

コメント

 
こんばんは。このようにして曲をリンクして頂くと非常にわかりやすいです。😀👌ボブ・ディランの演じた役割は大きかったのですね。ご紹介頂いた4曲の中では、3曲目が自分の感性に見合う気がしました🎯次回も楽しみにしています。

◎まとめ◎
お陰様で本日も己の見聞を広めることができました。🆗かーとさん、今週もいいウイークエンドをお迎えください。おはからいに感謝しています。ありがとうございます。
横町さん、こんばんは。

曲をリンクしたことをお褒めいただきありがとうございます。
やはり音楽は一度軽く聴いてみると一気にイメージが膨らみますよね。

今回は4曲も一気にリンクしたことで、
聴くのに時間がかかってしまったかもしれないとも思っていますが;汗

>ボブ・ディランの演じた役割は大きかったのですね

興味深いのはフォークロックの立役者であるThe ByrdsもThe Turtlesも
どちらもボブ・ディランの曲をカバーしているということですね。

それだけボブ・ディランの曲がロック方面で活動している人にも魅力的で、
ロックのスタイルでカバーしたいと思わせる力があったのでしょうね。

そして次回はそのボブ・ディラン自らがフォークロックに挑戦します!
ぜひそちらも楽しんでもらえるとうれしいです。

それでは、コメントありがとうございました。
かーとさま
今回はフォークロックの黎明期の紹介ですね。やはりまずはボブ・ディラン,最初の曲含め少し知ってる程度です。60年代半ばまではそれぞれが独立した間柄だったのが最初の動きはロックバンドがフォークをカバーして新しいものを作り上げると印象がだいぶ違いますね。こうしてみるとロックバンドはいろんなことを試したり受け入れたり斬新なことをどんどんしていきますね。よくわかります。

さて前回のインダストリアルロックの追加ご説明ありがとうございます。友人が特に聞いていたのがそのナインインチネイルズです。おっしゃる通りインダストリアルメタルの方がすっきりしますね。インダストリアルロックという名を初めて聞いたとき、渋谷陽一さんあたりが言っていた産業ロックのことだと思ったんですよ。Indutryは産業の意味ですから。そしたらまったく別物で驚きました。

さらにナインインチネイルズの数年前の無料配布された2枚組聞かされてすばらしいですがこれは環境音楽?という印象で驚きました。コロナ拡大で人の心をいやしてあげたいという目的のようでしたが、こんな楽曲も作るんだと感嘆しました。ブライアンイーノはその先駆者ですし、ロックミュージシャンは繰り返しになりますがほんといろんなことを開拓していく人が多いなと思います。すみません前回のことを長くお話してしまいました。

次回楽しみにしております。
とら次郎のとうちゃんさん、こんばんは!

>ボブ・ディラン,最初の曲含め少し知ってる程度です。

ボブ・ディランって、ものすごくキャリアが長くアルバムが多いので、
興味がありつつもどこから聴けばいいのかわからなくなりがちですよね;

80年代ハードロックが好きだった人であれば、
最も有名な曲は"Knockin' on Heaven's Door"かもしれませんね!

これはGuns N' Rosesがカバーしたことでも有名ですからね!

>ロックバンドがフォークをカバーして新しいものを作り上げると印象がだいぶ違いますね。

ただカバーするだけでなく、自分達のカラーをはっきり出そうとする、
それによって新しいものを生み出しているのが素晴らしいですよね!

言われないと原曲がシンプルなフォークだとはわからないですからね!(●・ω・)

>こうしてみるとロックバンドはいろんなことを試したり受け入れたり斬新なことをどんどんしていきますね。

ロックの歴史をたどってみると、本当にロックバンドって
様々な革新的な試みをしているのですよね!

60年代のサイケデリックロック、70年代のプログレッシブロック、
70年代後半のポストパンク、80年代後半からのオルタナティブロックなど、
こうした試みを見ていくと、本当に楽しくなってきますね!

>友人が特に聞いていたのがそのナインインチネイルズです。

なるほど、やはりNine Inch Nailsあたりでしたか!
NINはほんとインダストリアルメタルの代表格ですからね!

>インダストリアルロックという名を初めて聞いたとき、
>渋谷陽一さんあたりが言っていた産業ロックのことだと思ったんですよ。
>Indutryは産業の意味ですから。そしたらまったく別物で驚きました。

ちなみにインダストリアルロックと呼ばれる、
メタル要素のないインダストリアルが先にあったのですが、
それはこんな感じで、完全にパンクの方面の音なのですよね!

Big Black - The Power of Independent Trucking (1987)
https://www.youtube.com/watch?v=cm9HvDT7BSE

インダストリアルロックの中にはその名の通り、
「工場の稼働音か?」みたいなのもあったりしますね!

このあたりの音がルーツになって、メタルの要素(特にスラッシュメタル)を
取り入れることで、インダストリアルメタルの音が完成したわけですね!

ちなみに「産業ロック」というのはほぼ日本だけで呼ばれているジャンルで、
英語圏ではアリーナロック、スタジアムロック、コーポレートロックなどと呼ばれます!
(この手の日本だけで呼ばれているジャンルというのがちょくちょくあります)

Toto, Journey, Bostonあたりがその代表格とされますね!

>ナインインチネイルズの数年前の無料配布された2枚組聞かされてすばらしいですが
>これは環境音楽?という印象で驚きました。
>コロナ拡大で人の心をいやしてあげたいという目的のようでしたが、こんな楽曲も作るんだと感嘆しました。
>ブライアンイーノはその先駆者ですし、

その2作品(Ghosts VとVI)はまさにブライアン・イーノが確立した
アンビエントミュージックを受け継ぐスタイルのものでしたね!(=゚ω゚)

普通に日本に住んでいてヒットチャートの音楽だけに触れていると、
ロックの世界がこんなに革新的なものに見ていると気付かないのですが、
そうした世界に触れていくとほんと素晴らしいものがたくさんありますよね!

最初はその実験性の強さについていけないなんてこともありますが!

>すみません前回のことを長くお話してしまいました

いえいえ、どうぞお気になさらず、むしろ歓迎ですよ!(=゚ω゚)

こうして話が広がっていくのは私としても非常にうれしいですからね!

ではでは、コメントありがとうございました!(゚x/)

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