ロックの歴史 第3回(1980年代のメインストリームシーン)

前回の「ロックの歴史 第2回」記事ではパンクムーブメントまで語りましたが、
パンクの確立は従来のハードロックシーンにも強い変化のきっかけを与えると同時に、
パンクもまたさらに形を変化させ、新たな音楽スタイルを生み出していきました!

そして80年代のメインストリームシーンはアメリカを中心に極めて豪華で
ロックの歴史上最もバブリーなムードへと染まっていきます!

今回はそのあたりの流れについて見ていきましょう!(=゚ω゚)

--------------

◎ヘヴィメタルの勃興とポストパンク時代への移行(70年代後半から80年代前半)


ハードロックの複雑化に対する反発は当のイギリスのハードロックシーンの間でも起こりつつあった。彼らはパンクロックムーブメントを横目で見ながら、「ハードロックもパンクのようなストレートな攻撃性を取り戻すべきだ」と考え、ハードロックのあり方を変えることを試みていくことになる。

その先頭に立ったのがイギリスのIron Maiden[アイアン・メイデン]であった。しかしその前に絶対に外すことができないバンドがいる。それがJudas Priest[ジューダス・プリースト]である。70年代中期から活動していたJudas Priestはハードロックを基盤にしながら、ザクザクとした縦のリズム感とより攻撃的なギターサウンドを指向し、新たにヘヴィメタル(Heavy Metal)と呼ばれるサウンドを確立する。Iron Maidenをはじめとした多くの新進気鋭のバンドがこのJudas Priestが先鞭をつけたスタイルを取り入れ、ヘヴィメタルは大いに勢いを増し、このムーブメントはNWOBHM(New Wave of British Heavy Metal)と呼ばれるようになる。Iron Maidenはその後に数多く登場することになる、叙情性を帯びた正統派メタルのスタイルを確立した立役者ともなり、Judas PriestもこのNWOBHMの流れを受けさらに地位を確固たるものとしていく。また、ハードロックの硬質さとパンクの性急な感覚をミックスしたMotorhead[モーターヘッド]はパンクのファン層からも支持を受けることに成功する。

一方のパンクシーンでも大きな変化が起きつつあった。もともとパンクロック勢が求めていたのは「ロックが音楽的に自由であること」であり、必ずしも「シンプルさを極端に追求した音楽スタイル」のみにこだわっているわけではなかった。そのため、パンクロックが多くの支持を獲得し、1つの音楽スタイルとして確立するにつれて、「もう従来のパンクロックはいいから、新しい音楽性を模索していこう」という動きが急激に加速していくこととなる。

そんな中で彼らが注目したのは、ロックと他のジャンルとの融合や、当時注目されていたシンセサイザーを音楽に大幅に取り入れていくことであった。そうして生まれた音楽は複雑さを内包していると同時に、コンピュータの持つ無機的で冷たい感覚を大幅に持った、「攻撃的でありながらどこか冷めていて鋭い」サウンドであった。こうしたサウンドはポストパンク(Post-Punk)と呼ばれるにようになっていく。

Sex Pistolsのフロントマンだったジョニー・ロットンはあっさりとピストルズを離脱し、「パンク後(=ポストパンク)」の音楽のあり方を追求するためにPublid Image Ltd.[パブリック・イメージ・リミテッド](PILと略されることが多い)を結成し、The Clashは3rdアルバムの"London Calling"(ロンドン・コーリング)で様々な音楽性とパンクとの融合を試み、The Damnedは中世ヨーロッパ的なゴシック感覚をそのサウンドに大幅に取り込んでいく。ロンドン5大パンクバンドの1つに数えられながら、もともとそうした指向性を持っていたThe Stranglers[ストラングラーズ]に加え、ニューヨークの地下シーンでアート感覚とパンクの融合を模索していたTelevision[テレヴィジョン]やTalking Heads[トーキング・ヘッズ]などもこうした文脈から浮上してくる。また、ポストパンクシーンにおいてGang of Four[ギャング・オブ・フォー]やKilling Joke[キリング・ジョーク]などが新たに注目され、非常に高い評価を得ていくことになる。

ポストパンクはその音楽性の難解さから大衆的な人気はそれほど得ることはなかったが、同時にポストパンクと同じような指向性を持ちながら、大衆性を持ち合わせたバンドも数多く登場してくる。その代表とも言えるのがイギリスのThe Police[ポリス]やTears for Fears[ティアーズ・フォー・フィアーズ]、そしてアメリカのThe Cars[カーズ]であろう。The Policeはレゲエとパンクの融合、Tears for Fearsはポストパンクの無機質な感覚とシンセの融合、The Carsはほどよくパンクとシンセをミックスしたポップなサウンドを提示して、人気を獲得していった。こうした音楽性はニューウェイブ(New Wave)と呼ばれるようになっていく。

ポストパンクとニューウェイブの区分けは難しいところがあるが、「パンクが他のジャンルやシンセサイザーなどとの融合を果たしていった中で、実験性を重視したものがポストパンク、大衆的な要素を強く持っているものがニューウェイブ」と考えればいいだろう。

また、ポストパンク/ニューウェイブはその枠の中からいくつかのサブジャンルも生まれた。シンセサイザー色が強いものはシンセポップ(Synth Pop)、グラムロック的な派手な要素を強く取り入れたものはニューロマンティック(New Romantic)、中世ヨーロッパ的なムードを強調したものはゴシックロック(Gothic Rock)、ニューヨークの地下シーンで広がった大衆性を完全に排除したようなサウンドはノーウェイブ(No Wave)と呼ばれるようになっていく。シンセポップとしてはNew Order[ニューオーダー]やDepeche Mode[デペッシュ・モード]、ニューロマンティックとしてはDuran Duran[デュラン・デュラン]、ゴシックロックとしてはBauhaus[バウハウス]などが注目を集めていく。また、今では世界的なバンドとなったU2[ユーツー]ももともとはポストパンク/ニューウェイブのシーンから生まれたバンドであった。ディスコサウンドなどもこのポストパンク/ニューウェイブの流れから生まれていったものが多い。

一方でパンクシーンにおいて、すでに確立されたパンクロックのスタイルを進化させようという動きも生まれていた。パンクロックのスタイルをそのまま継承しつつ攻撃性を高めたストリートパンク(Street Punk)や、パンクロックのテンポを著しく速くしたハードコアパンク(Hardcore Punk)などが生まれ、イギリスからはDischarge[ディスチャージ]やCharged GBH[チャージド・GBH]、アメリカからはDead Kennedys[デッド・ケネディーズ]やBlack Flag[ブラック・フラッグ]、Minor Threat[マイナー・スレット]などが誕生していく。

◎メタルシーンの拡大によるポップ化の進行とそれに対する反発(80年代前半から中盤)


もともとはハードロックからストレートな攻撃性を指向して生まれたヘヴィメタルだったが、80年代前半にかけて急速なポップ化が進んでいくことになる。そのきっかけとなったのは、イギリスのメタルシーン出身のDef Leppard[デフ・レパード]と、アメリカのVan Halen[ヴァン・ヘイレン]であった。メタル的なサウンドとポップなメロディを併せ持たせたDef Leppardに、メタルの持つテクニカルな側面を強調しながらも都会的なポップネスを持ち込んだVan Halenはアメリカを中心に大きな人気を獲得し、アメリカにおけるヘヴィメタルムーブメントの大きなきっかけを作り出していく。

そしてロサンゼルスから、それらのスタイルを取り入れ、なおかつグラムロック的な派手なビジュアルを持ち込んだMotley Crue[モトリー・クルー]、Ratt[ラット]、Dokken[ドッケン]などのバンドが登場し、これらも大きな人気を獲得していく。さらに80年代中期には、これらのバンドに比べて土臭い雰囲気を強く持ったBon Jovi[ボン・ジョヴィ]が巨大な成功を収め、アメリカのメインストリームの音楽シーンは派手でポップなヘヴィメタルとシンセによる豪華なニューウェイブの2つのサウンドで華やかに彩られることとなった。また、70年代ハードロックの代表格であったAerosmithも80年代的なサウンドを取り入れてシーンの中核に返り咲き、第二の黄金期を迎えることになる。これらのメタルサウンドはグラムメタル(Glam Metal)ないしはポップメタル(Pop Metal)と呼ばれた。ヘアスタイルが派手であったことからヘアメタル(Hair Metal)と呼ばれることもあるが、これはしばしば否定的なニュアンスで用いられることが多い。

ポップなメタルがシーンを席巻する一方で、そうしたロックのポップ化を否定的にとらえる向きも少なくなかった。それはパンクの流れを汲んだシーンだけでなく、メタルの中からもそうした動きが起きてくることになる。その中でとりわけ大きく浮上したのが、Iron Maidenなどの正統派メタルにハードコアパンクのテンポの速さを取り入れたスラッシュメタル(Thrash Metal)であった。Metallica[メタリカ]によって始められたそうした新たなメタルのスタイルは最初の頃は異端として扱われていたが、Metallicaが大きなヒットを起こすことに成功し、さらにMegadeth[メガデス]、Anthrax[アンスラックス]、Slayer[スレイヤー]などのバンドが浮上してくることによって、メタルシーンの中でも重要な地位を占めるに至っていく。
また、スラッシュメタルとは違う形で攻撃的なハードロックやメタルが浮上してくることもあった。Guns N' Roses[ガンズ・アンド・ローゼズ]はそれまでの80年代的なポップなメタルとは異なり、パンクからの影響も強く受けたストレートな攻撃性を有しており、1stアルバムである"Appetite for Destruction"(アペタイト・フォー・デストラクション)はアメリカ国内だけで1500万枚を超えるセールスを記録した。また、最初はBon Joviの後押しを受けてデビューしたSkid Row[スキッド・ロウ]も初期はグラムメタル的なサウンドだったが、その後は攻撃的なメタルへの接近を強めていった。

---------------

パンクロックムーブメントへの対抗としてヘヴィメタルが新たな時代を迎え、
一気に80年代のメインストリームの中核へと躍り出ていきました!

一方のパンクはそこから派生したニューウェイブが商業的に成功する一方で、
ポストパンクはむしろアンダーグラウンドシーンでの活動が目立ちました!

しかしそれは決して単なる「パンクのアンダーグラウンド化」ではなく、
後に一気に芽吹くことになる新しい音楽スタイルの種まきへと繋がります!

次回はこのアンダーグラウンドにおけるパンクシーンの動きをさらに掘り下げます!

ということで、今回もちょっとした雑学的な感覚でロックの歴史をお楽しみください!(゚x/)

【関連記事】
ロックの歴史 第6回(2000年代前半まで)
ロックの歴史 第5回(1990年代前半)
ロックの歴史 第4回(1980年代のアンダーグラウンドシーン)
ロックの歴史 第3回(1980年代のメインストリームシーン)
ロックの歴史 第2回(1970年代)
ロックの歴史 第1回(1960年代)

にほんブログ村 音楽ブログ 洋楽へ 音楽(洋楽)ランキング このエントリーをはてなブックマークに追加
(クリックしてくださる際にはCtrlキーを押しながらすると非常に楽です。)

テーマ : 洋楽ロック | ジャンル : 音楽

コメント

 
おはようございます。70年代とともに、自分に大きな影響を与えたのが80年代ロックです。それは気弱な自分を世間の荒波に曝し、少しでも抵抗力をつけ、性格改造のアイテムとしたことです。

かーとさんのように体系的に、理路整然とは説明できませんが、「そう言えば、あの曲があったな」という具合に、体に染みついているのが80年代のロックです。自分の場合は空中遊泳しながら、記事を書くのでVan HalenのDreamsやJumpとアルコールを掛け合わせトリップすることがよくあります。

以前はDuran Duranも聞きました。 Whitesnakeもゾーンです。それと真打はQUEENです。これらの曲(グループ)と出遭わなければ、今の自分はなかった(別人になっていた)気がします。80年代ロックから何を得たか?と問われれば、欧米的志向とも言える「自己主張も実力のうち」という思考です。これがなければ、くらげのような人間になっていたのかも知れません。

別な面としては、モータースポーツ番組のBGMに多く使われたのも、この年代のロックでした。シチュエーションにおいて、これほど似合うBGMはあり得ない気がします。今後も、かーとさんからの洋楽ロックの情報に期待しています。

◎まとめ◎
お陰様で本日も知見にあふれた記事に触れさせて頂きました。かーとさん、今日もいい一日をお過ごしください。ありがとうございます。
ミーハーな鳥天はビジュアルから入ったので、ピストルズとかデビットボウイ、デッド・オア・アライヴとか好きだったけれど、ロックシーンの流れとか体系的に考えたことないなぁ。あ、ヘビメタは苦手です(ビジュアルが)(*´艸`)
横町さん、こんばんは。

>自分に大きな影響を与えたのが80年代ロックです。
>それは気弱な自分を世間の荒波に曝し、少しでも抵抗力をつけ、性格改造のアイテムとしたことです。

横町さんのブログを拝見して、横町さんが貼る音楽動画を見ていると、
80年代の曲が多く、「80年代ロックがルーツなのだろうな」と
強く感じていた次第です。

80年代のロックに多くの力をもらっていたのですね。

>「そう言えば、あの曲があったな」という具合に、体に染みついているのが80年代のロックです。

思えば80年代は洋楽ロックが最も身近だった時代だったと思います。

80年代のロックを聴いていると、
「あ、これ日本のCMなどで聴いたことがある」と思うものが多く、
知らないうちに心の中に染みついているものがあるのでしょうね。

>Van HalenのDreamsやJumpとアルコールを掛け合わせトリップすることがよくあります。

Van Halenのこの記事のロックはまさに80年代を代表するものですよね。

シンセの全盛期であり、同時にポップで派手なハードロックが流行した時代、
その両者をミックスしたVan Halenの"Jump"はその1曲だけで
80年代のロックの持つ雰囲気を明確に伝えてくれますよね。

>以前はDuran Duranも聞きました。 Whitesnakeもゾーンです。それと真打はQUEENです。

こうして様々なバンドの名前が出てくると非常にワクワクしてきます。

横町さんがDuran Duranも聴いていたというのは少々意外でしたが、
たしか以前にPet Shop Boysの曲を貼られていましたし、
ダンスとも通じるシンセサウンドも横町さんの力になっていたのですね。

そしてブルースにも通じる土の香りのするサウンドと80年代的なポップ感、
そこにデヴィッド・カヴァデールのソウルフルなヴォーカルが重なる
Whitesnakeは私としても非常に優秀なバンドだと思います。

横町さんも貼られていたと記憶していますが、
"Here I Go Again"は力を与えてくれる曲ですよね。

そして70年代から80年代にかけて時代を超えて活躍した
Queenはハードロックの歴史を語るうえで絶対に外せないバンドの1つですよね。

これらのバンドの曲が横町さんのブログで紹介されるのも楽しみにしています。
こうしていろいろなバンドの話をしていると、私も心が熱くなってきます。

様々なバンドへの情熱を感じる熱いコメントを本当にありがとうございます。

>これらの曲(グループ)と出遭わなければ、今の自分はなかった(別人になっていた)気がします。
>80年代ロックから何を得たか?と問われれば、欧米的志向とも言える「自己主張も実力のうち」という思考です。
>これがなければ、くらげのような人間になっていたのかも知れません。

こうして横町さんの話を聞き、自分自身の経験も照らし合わせると、
ロックって本当に力があると思います。

ロックの持つパワーや情熱、さらには反骨精神といったものが、
人間性にも入り込んで、人格形成にも関わっていたと思います。

私もロックの価値観から受けた影響は計り知れないものがあり、
横町さんのこの思いにも非常に共鳴を感じます。

それでは、いつも温かいコメントを本当にありがとうございます。
鳥天さん、こんばんは!

おぉ、なるほど、鳥天さんは
グラムロック→パンク→ニューロマンティック
あたりのビジュアルがツボに入るのですね!

鳥天さんは沢田研二さんが大好きですし、
沢田研二さんはグラムロックからの影響が強い方なので、
そのあたりがハマるというのは大きくうなずけるところですね!(●・ω・)

デヴィッド・ボウイなどは非常に素晴らしいアルバムが多いですし、
今から趣味的にいろんなアルバムや動画を漁ってみるのも楽しいかもですよ!

「ちょっとかーと君、デヴィッド・ボウイのどのアルバムを聴けばいいか教えてくれ」
と言われれば、喜んでいろいろ紹介いたしますので!

80年代のヘヴィメタルはビジュアルが非常に独特でしたよね!笑

今でも当時のMVなどを見ると、
「すごい髪型だな」なんて思ってしまうことがありますし!

ではでは、コメントありがとうございました!(゚x/)

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog
/ ある事件の記録ブログ版
Copyright © He can eat anything but himself! All Rights Reserved.