みんなありがとう (前)

7年近く飼っていた金魚さんが、6月4日に天に召されました。

ずっと飼っていた3匹の金魚さんたちと出会ったのは7年前の8月、
兵庫県にほど近い池田市で開かれていた夏祭りの夜店でした。

そのときにした金魚すくいから連れて帰ってきたのが
小赤(ふつうの赤い金魚)2匹と、黒い出目金2匹でした。

小赤のうちの一匹は10日ほどで他界してしまいましたが、
残りの3匹ははるばる遠くの街から連れて来たにもかかわらず、
すでに大きくなっていた先住の赤い金魚2匹とともに元気にしていました。

翌年の5月には、僕の飼育ミスにより白点病にかけてしまい、
先住の2匹を他界させてしまうことになってしまいましたが、
3匹はそれも乗り越え、再び元気にすくすくと育っていきました。

その後は、夏場にときどきガス病にかかったことを除けば、
ごくごく平和に3匹そろって元気にすごしてくれていました。

ガス病というのは、水中の酸素濃度が飽和量を超えてしまった結果、
金魚の体内で水に溶けている酸素が気体に戻ってしまい、
金魚の体の一部が泡のようにふくらんでしまう病気のことです。

うちの水槽は屋外にあるので、夏場は日照時間も増え、
水中の植物プランクトンが増えることで酸素濃度が上がり、
それがガス病を起こしてしまう原因になったりします。

とはいえ、これは菌や細菌がかかわっている病気ではないため、
適切な水替えを行えば数日のうちに完治させることができます。

そんな中、出目金さんのうちの一匹は面白いことを教えてくれました。

飼ってから3年ほど経った頃、その子のお腹が変色していることに気付きました。

「何かの病気ではないか」と思って調べてはみたものの、
そのような症状の病気はどこにも見当たりませんでした。

さらに調べているうちに、ある可能性に行き着きました。
「黒い出目金さんの色が変わろうとしているのではないか」と。

実際にそのとおりで、その出目金さんは日に日に黒い色が抜け、
黒い部分と赤い部分が混在した不思議な姿になっていきました。

この事実はこの出目金さん(あかぐろさん)に教えてもらいました。

もう一匹の出目金さん(くろきん)は少し黒が色あせはしたものの、
あかぐろさんのようにはならず、基本的に黒い姿のままでした。

一方の小赤さん(あかきん)はひたすら元気で、僕が近くに来るたびに、
水面に上がってきて口で音を立てながらえさをねだるのが日常でした。

小赤は出目金よりも泳ぎが得意なため、えさを食べるのも上手く、
2匹の出目金さんよりも速いペースで体が大きくなっていきました。


その生活に大きな変化が訪れたのは、この前の冬でした。

水槽が外にあるため、冬場は当然のことながら水温が下がります。
水温が下がると魚も冬眠に近いような状態へと入り、
えさをあげる必要もなくなり、一時的に世話は不要になります。

そんな状態に入りかけていた今年の1月4日ごろ、
水槽を覗くとあかぐろさんだけが見当たりませんでした。

また、あかきんは体の一部が白っぽくなっていました。

「もしかして、何者かに襲撃された?」、「そういえば12月の末頃に
1年ぐらい前に生まれた野良猫が濡れた足でうちのドアの前を歩いてた・・・」

しかし、その野良猫も金魚の水槽を水飲み場としてしか利用しておらず、
冬場の金魚は活性が落ちて底のほうでじっとしていることも多いので、
足が濡れていたのはどこかに落ちただけともまだ考えられました。

しかしそのすぐ後に、水槽の底のほうをいろいろと探してみたとき、
あかぐろさんはおらず、あかきんのうろこが10数枚ほど見つかりました。

「これはやっぱり、あの野良猫に襲撃されたにちがいない・・・」

昨年に僕の部屋のベランダの雨除けの屋根を取り替えたことがあり、
その長さの関係から、屋根に落ちた水が水槽に入りやすくなっていました。

これは水温の急変を招きかねないため、あまりいいことではなく、
昨年からは水槽の一部に覆いをかけていることが増えました。

しかし、それは同時に水槽に入る太陽光が減ることにもつながります。
そこに冬場の日照時間の減少が重なり、植物プランクトンが減り、
水槽の中の水は12月頃からだんだんと透明化していきました。

この水の透明化が金魚さんたちが狙われる要因になったのでしょう。

その野良猫は近所でも評判になるほどの性質の悪い猫でした。

小さい頃から燃えるごみの日のごみ袋を軒並み荒らしまわり、
ときにはごみ箱を無理矢理こじ開けて荒らすこともありました。

また優しくしようとした人間にも飛びかかるなど、
自分が知っている猫の中でもとりわけ酷いものでした。

そのため、最初の頃は警戒心を持って接していたのですが、
金魚の水槽に関してはあくまで水飲み場にしかしていなかったので、
このような事態が起こることへの警戒心は薄れてしまっていました。

自分は猫を飼っていることもあり、かなりの猫好きで、
猫という生きものにはつねに性善説で見ていたところがありましたが、
このとき初めて猫を嫌いになる人の気持ちがわかった気がしました。

猫によって同じような目にあった人はきっといるでしょうし、
魚でなくとも、せっかく育てた植物が荒らされた人もいるでしょう。

全ての猫がいい猫というわけではないことを痛感させられました。


この日から、覆いは取り外し、水槽には網をかけることにしました。
あかぐろさんは、水槽の中はもちろん、どこからも見つかりませんでした。

水槽の近くや、道路、道路わきの溝なども見て回りましたが、
あかぐろさんのなきがらを見つけることはできませんでした。

道路で見つけた小さな魚のなきがらを庭で埋葬はしましたが、
歯があったことを考えると、それは金魚ではなかったのでしょう。

この事件の後、くろきんは水槽の底でじっとして過ごしていました。

くろきんはもともと3匹の中でもおとなしい性格の子でしたし、
冬場で活性が落ちていることもあるので、これは普通に思えました。

そのうち、覆いを外したことで透明化した水は徐々に青くなり、
何事もないかのように冬は過ぎていき、春がやってきました。

春が来て暖かくなると、あかきんは元気を取り戻しはじめ、
去年までのようにえさをほしがるようになりました。

しかし、くろきんがいつまで経っても水面に顔を見せません。

もともとえさのとき以外は水面に顔を出さない子でしたが、
さすがに不自然に思い、水槽の底のほうを少し探してみました。

すると、変わり果てた姿になったくろきんが見つかりました。

それほど水面に上がってくる性格の子ではなかったので、
襲撃の被害からは免れていたものと思っていました。

しかし、水槽の底でじっとしていたのは傷ついていたからだったのでしょう。

くろきんの体は半分ほど朽ちてしまっていました。
もう遅くとも2月頃には息絶えてしまっていたのでしょう。

造幣局に桜の花を見に行く2日ほど前の出来事でした。

くろきんは庭に埋葬してあげてから、その上にたくさんの花を飾りました。
弔ってあげることすらできなかったあかぐろさんのためにも。
[後] へ続く)

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テーマ : 金魚 | ジャンル : ペット

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